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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

住宅取得資金の贈与に係る非課税の取扱い (21/6/7更新)
Q

 別居している父と娘が家を建て同居することになりました。
 建築費4,500万円の家の新築にあたり、父は娘に住宅取得資金として1,500万円贈与し住宅完成の際には父2/3、娘1/3の所有権割合で共有登記する予定です。
 建築請負契約は、娘が別居していることもあり、父が単独で令和2年4月に契約済みです。
 コロナの影響もあり、諸手続きが遅れ、手付金として令和3年1月に父からハウスメーカーに1,000万円が支払われ、その後令和3年3月に1,500万円の贈与が父から娘に行われました。

 娘はその1,500万円を中間金として令和3年6月に支払う予定です。
 工事着工は令和3年4月予定、完成引渡しは令和3年10月、父と娘の入居は12月予定です。
 そこで確認したいのは、建築請負契約書の契約者が父単独の契約になっていることが住宅取得資金の贈与に係る非課税の取扱いについて問題になることがあるのかということです。

 この特例を受けようとする場合は、建築請負契約書等を贈与税の申告書に添付することになっていますが、私見として娘が支払った1,500万円の領収書の写しを贈与税の申告書に添付すれば問題はないように思われますがいかがでしょうか。




A

1 直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の対象となる受贈者の要件は次の通りとされています。

(1)贈与を受けた時に贈与者の直系卑属であること。
(2)贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること。
(3)贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること。
(4)平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと。
(5)自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、又はこれらの方との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものではないこと。
(6)贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。
(7)贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること。
(8)贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。


2 ご照会は、住宅用家屋の請負契約が贈与者である父親名義だけの場合に問題があるかというものですが、条文上では、「住宅取得等資金の全額を住宅用家屋の新築若しくは建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得のための対価に充てて当該住宅用家屋の新築若しくは建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をした場合」としていますので、受贈者が住宅用家屋を新築しておればよく、契約書の名義人については直接の要件としていません。
 しかし、贈与税の申告に際しては、添付書類として、特別の関係のある者以外の者との請負契約により新築したこと及びその契約をした年月日を明らかにする書類を提出する必要があります(措規23の5の2I一イ)ので、娘さんが支払った領収書の写しで足りればいいのですが、それでは難しいと思います。このため、娘さんは、本件請負契約に係る注文者であるということを明らかにしておく必要があると考えます。その方法としては、契約者変更(追加)が難しいようならば、覚書を締結しておくような方法もあると思います。




(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
   

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