〔回答〕 ご照会の内容には、贈与株数が具体的に示されておりませんので、ご提示いただいた現状の条件を前提として、一般的に考えられる贈与について回答いたします。 株主A又は株主Cの贈与後の議決権割合が30%以上であることを前提とすれば、贈与後の受贈者の属する同族関係者グループの議決権数の合計により判定した議決権割合が30%未満であれば、当該贈与に係る取引相場のない株式の評価は配当還元方式によることになると考えます。
〔説明〕 まず、前提として、贈与の場合の取引相場のない株式の評価に当たっては、贈与後の株式数を基に評価方式を判定する必要があります(平成2年12月27日付直評23ほか「相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等について」参照)。 ご照会のケースを、@持株数と議決権数が同数であること、A株主間に同族関係者となる関係がないことを前提に整理しますと、現状では、株主Aが筆頭株主で議決権割合34%(1%未満切捨て。以下同じ。)、株主Cの議決権割合が31%で、そのほかには議決権割合が30%以上の株主はいません。したがって、現状では株主A及び株主Cは同族株主等に該当し、そのほかの株主は同族株主以外の株主等となります。 今後の贈与の結果、株主Aの議決権割合が30%未満となった場合には、株主Cのみが同族株主等となることが予想されますが、株主Cが30%以上の議決権割合のままでいる限り、受贈株主の受贈後の議決権割合が30%以上とならなければ、当該株主は同族株主以外の株主等となり、受贈株式の評価は配当還元方式によることになります(評基通178ただし書き、188、188-2)。 なお、株主A及び株主Cの議決権割合がいずれも30%未満となる場合には、筆頭株主グループの議決権割合が30%未満となりますので、別途、評価方式の判定を行う必要があります。 最初に説明したとおり、贈与の場合の評価方式の判定は贈与後の持株数(議決権数)を基に行うことになりますので、同じ株数を贈与した場合でも、贈与後の受贈者の属する同族関係者グループの議決権割合によって評価方式が異なる場合がありますので、贈与の際には、贈与の度ごとに、「取引相場のない株式(出資)の評価明細書・第1表の1」により贈与後の議決権数を基に評価方式を判定されることをお勧めします。「相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等」は、それ自体が国税庁の通達ですので、同様式に従って判定していくことにより、通達の定めに沿って評価していることになります。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より) |