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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

小規模宅地等の特例(特養ホーム入所後に退所して入院先で死亡した場合) (21/10/7更新)
Q

被相続人 A
相続人 長男B、長女C
相続開始 令和3年1月10日
自宅の土地建物は被相続人A所有

 被相続人Aは、平成26年より要介護認定を受けて特別養護老人ホームに入所しました。
 Aは入所の直前まで、自宅で長男Bと同居していました。
 入所時にAは住民票の住所を自宅から老人ホームに移しました。
 その後Aの体調が悪くなり病院に入院が必要となったため、令和2年10月に老人ホームを退所して入院し(自宅には戻っていません)、自宅に住民票の住所を戻しました。その後、令和3年1月10日に入院先の病院で亡くなりました。
 Aの施設費や入院費用は、Aの口座から引き落とされていました。(長男Bと生計を一にしているとは言えない状態です)
 健康保険の限度額の認定の関係で、令和2年12月に世帯分離を行っています。それまでは同一世帯でした。
 長男Bは引き続き自宅に済んでいます。
 遺産分割協議で、自宅土地建物を長男Bが相続することになりました。
 この場合、長男Bは小規模宅地の特例を適用することは可能でしょうか。
 老人ホーム退所後は病院に入院しており、その場合には生活の本拠地は自宅であると認識しています。入院しているために現実として同居しているとはいえないのですが、退院後は自宅に戻ると推定して、長男Bを同居親族として取り扱うことは可能でしょうか。


A  

〔回答〕
 ご照会の事例では、被相続人Aが特別養護老人ホームに入所する直前においてAと長男Bの生計が一であれば、ご照会の土地は特定居住用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例の適用が可能と考えます。

 

〔説明〕
 小規模宅地等の特例(以下「特例」といいます。)に規定する「居住の用」には、被相続人が居住の用に供することができない事由として政令(措令40の2A)で定める事由より相続の開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていなかった場合における当該事由により居住の用に供されなくなる直前の当該被相続人の居住の用が含まれます(措法69の4@)。
  この場合に、その建物を事業の用又は被相続人等(被相続人と老人ホーム等に入居する直前において生計を一にし、かつ、当該建物に引き続き居住している被相続人の親族を含みます。)以外の者の居住の用に供していなかったことが要件とされています(措法69の4@、措令40の2B)。
 したがって、Aが特別養護老人ホームに入居する直前において、AとBが生計を一にしていれば、その後、生計が別になったとしても、措置法施行令40の2第3項かっこ書きの「引き続き居住している被相続人の親族」に該当し、特例適用の要件を満たすこととなります。
 相続開始時点においては、BはAと生計一とはいえない状態とのことですが、Aが特別養護老人ホームに入居する直前において、BはAと同居しており、建物の構造が二世帯住宅であるなど特殊な場合でなければ、通常、生計を一にしていたといえる状態にあったのではないかと思います。そうであれば、上記で説明したとおり特例適用が可能になるものと考えます。
 なお、Aが特別養護老人ホームに入居する直前において、BがAの生計を一にする親族に該当しない場合には、別途検討が必要ですが、生活の本拠は一旦老人ホームに移っていますので、相続開始直前の2か月前後の入院と住民票の移動のみで、従前の居宅を生活の本拠と判断できるかどうかとなると、かなり困難ではないかと考えます。




(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
   

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