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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税事例

特定貸付事業と3年以内の新規貸付 (22/1/12更新)
Q

長年、事業的規模で不動産賃貸業を営んでいた被相続人Aですが、亡くなる前3年以内に賃貸不動産の買換えを行い、一時的に事業的規模ではなくなりました。
 このような場合は、3年を超えて引き続き事業的規模で事業を行っているとは言えず、小規模宅地等の評価減の適用はできないのでしょうか。

R3.5.15 被相続人A 死亡(3年前:H30.5.15)

(経緯)
 被相続人Aは、長年にわたり事業的規模で賃貸不動産業を行っていました(2棟所有)。

 H30.10.29にアパートを売却し、賃貸店舗のみになりました。

 H30.12.7に賃貸店舗も売却し、H30.12.25に分譲マンション6室を購入しました。

 H31.2.20に配偶者所有の土地に10室のアパート1棟を建て、現在に至ります。

 H30〜R2まで所得税は65万円の青色申告特別控除を受けています。


A  

〔回答〕
 ご照会の宅地(マンション6室の敷地権)については、貸付事業用宅地等に該当しないものと考えます。

 

〔説明〕
 小規模宅地等についての相続税の課税価格計算の特例の対象となる貸付事業用宅地等は、貸付事業の用に供されていた宅地等で、一定の要件を満たすものとされていますが、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等が除かれています。
 また、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等であっても、相続開始の日まで3年を超えて引き続き政令で定める貸付事業(特定貸付事業)を行っていた被相続人等の当該貸付事業の用に供されたものは、貸付事業用宅地等から除かれる対象から除かれていますので、一定の要件を満たせば貸付事業用宅地等に該当することとなります(措法69の4B四)。
 そして、特定貸付事業は、貸付事業のうち準事業以外のものとされています(措令40の2R)。

 ご照会の事例における貸付事業は、ご照会にある空白期間及びその前後における準事業である期間を挟んで特定貸付事業に該当する規模に該当するものと考えますが、空白期間及びその前後における準事業である期間があるため、「3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っていた被相続人」の要件(措法69の4B四)に該当しないことになります。
 租税特別措置法通達69の4-24の3(新たに貸付事業の用に供された否かの判定)は、貸家の建替え等が行われた場合等において、「新たに貸付事業の用に供された」ことに該当しない場合を定めていますが、ご照会のケースは同通達の条件にも該当しません。
 また、租税特別措置法通達69の4-24の5(特定貸付事業が引き続き行われていない場合)の内容に照らしても、ご照会の宅地が貸付事業用宅地等に該当するという判断には至りません。
 したがって、税法及び通達に基づき検討した限りでは、ご照会の宅地は貸付事業用宅地等に該当しないものと考えます。




(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
   

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