〔回答〕
「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」については、ご照会のご見解のとおり、提出期限についての宥恕規定は設けられていませんので、配偶者の税額軽減の適用はできないものと考えます。
〔説明〕
ご承知のとおり、配偶者の税額軽減の適用を受けるためには、相続税の申告書に計算明細書などの一定の書類を添付することが要件とされていますが、当該申告書には期限後申告書を含むこととされています(相法19の2AB)。
また、配偶者の税額軽減は、分割されていない相続財産には適用されませんが、相続税の申告期限から3年以内に分割された相続財産は適用対象とされています。 さらに、申告期限から3年以内までの間に相続財産が分割されなかったことについて、相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該財産の分割ができることとなった日として政令で定める日の翌日から4月以内に分割された場合には、その分割された財産は配偶者の税額軽減の適用対象とされています(相法19の2A)。
ご照会においてお示しの見解のとおり、期限後申告においても配偶者の税額軽減の適用を受けることは可能ですが、上記の税務署長の承認を受けるためには、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」(以下「承認申請書」といいます。)を、相続税の申告期限後3年を経過する日の翌日から2月を経過する日までに提出することが要件とされており(相法19の2A、相令4の2、相規1の6)、提出期限についての宥恕規定は設けられておりません。
したがって、承認申請書が提出期限までに提出されていない場合には、配偶者の税額軽減は適用できないものと考えます。
なお、国税不服審判所の裁決においても、申請期限内に承認申請書の提出がなかった事例について、宥恕規定がないことを理由として配偶者の税額軽減の適用を否定した裁決が複数見受けられます。
また、地裁判決においても同様の判断がなされています(東京地裁H13.8.24判決)。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より) |