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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税ニュース

最高裁 非上場株のみなし譲渡課税巡り原審破棄 (20.4/3更新)
 最高裁判所第三小法廷は3月24日、非上場株のみなし譲渡課税に係る配当還元方式の適否を巡る事件で、一審の判決を覆して納税者側を逆転勝訴とした東京高等裁判所の判決を破棄し、審理を差し戻した。

 低額譲渡(譲渡対価が時価の1/2未満)により譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、譲渡所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、時価により、これらの資産の譲渡があったものとみなされる(所法59)。

 非上場株式等の取引相場のない株式の時価に関しては、原則として、一定の条件の下に、財産評価基本通達(評価通達)により算定した価額とするとしている(所基通59−6)。

 本件では、納税者側は上記の通達に沿って、評価通達の配当還元方式を採用。国側は、類似業種比準方式での所得税の更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。

 配当還元方式は少数株主のみ採用できるが、少数株主の判定について、納税者側は「株式の取得者の取得後の議決権の割合により行うべき」とし、国側は「株式の譲渡人の譲渡直前の議決権の割合により行うべき」としている。

 最高裁は、次のような見解等をして、審理を差し戻している。

 「所得税法59条は、譲渡所得の基因となる資産の移転時点で生じている増加益に対して課税できなくなる事態を防止するため、時価相当額により譲渡があったものとみなすものと解される。時価算定における、取引相場のない株式の評価方法について、会社への支配力が乏しいこと等から、評価手続の簡便性をも考慮して、少数株主の取得株式を例外的に配当還元方式によるものとしている。

 評価通達は、株式を取得した株主の議決権割合により配当還元方式を用いるか否かを判定するものとするが、相続税等では、相続等での財産取得者に対し、取得財産の価額を課税するものであることから、株式を取得した株主の会社への支配力に着目したものということができる。

 一方、株式譲渡に係る譲渡所得課税では、譲受人の会社への支配力の程度は、譲渡人の下に生じている増加益の額に影響を及ぼさず、譲渡人の会社への支配力の程度に応じた評価方法を用いるべきものと解される。相続税等の課税が前提の評価通達をそのまま用いることはできず、所得税法の趣旨に則し、その差異に応じた取扱いがされるべき。所得税基本通達59−6は、取引相場のない株式の評価につき、少数株主に該当性判断の前提となる“同族株主”に該当するかどうかは株式の譲渡・贈与直前の議決権の数により判定すること等を条件に、評価通達により算定した価額とするとしている。この定めは、譲渡所得に対する課税と相続税等との性質の差異に応じた取扱いをすることとし、少数株主の該当性も株式を譲渡した株主について判断すべきことをいう趣旨のものということができる」。
 

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