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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税ニュース

国税庁 路線価の補正等を検討 (20/8/20更新)
 

 国税庁は7月1日,令和2年分の路線価を公表した。

 路線価は,相続や贈与により土地等を取得した場合に,その評価額を算定するために用いられる。相続税等の課税対象となる土地等の財産は,時価により評価するが(相法22,評基通1(2)),納税者が自ら時価を把握することは容易ではない。国税当局は,申告の便宜及び課税の公平を図る観点から,その時価に路線価を用いており,土地等の評価額の基準として公表している(評基通14)。路線価は毎年1月1日を評価時点として,地価公示価格等を基にした価格(時価)の80%を目途に評価するものとされている。

 そのため,地価が大幅に下落し,路線価が時価を上回った場合は,路線価ではなく,不動産鑑定士による鑑定評価額などに基づき,納税者が当該土地等を相続等で取得した時の時価により個別評価とすることもできる。

 しかし,今般の新型コロナウイルス感染症の影響により,今後の社会経済情勢等が陰りを見せる可能性もあることから,国税庁は,『広範な地域で大幅な地価下落』が見られ,多数の納税者に及ぼす影響が大きいと判断した場合には,“補正率”を設定するなど,納税者の申告の便宜を図る方法を幅広く検討するようだ。

 『広範な地域で大幅な地価下落』とは,国土交通省が9月頃に公表する「都道府県地価調査」等の状況を踏まえて,広範な地域で,地価が令和2年分の路線価と比べて概ね20%以上下落したときを指す。

 補正率は,全ての路線に1つずつ設定されるのではなく,地価下落のあった地域において,市町村等の一定のエリア単位で設定されるようだ。仮に,補正率が設定された場合の評価方法は,次の通りである。

 (例)(路線価×補正率)×画地調整率×地積

 補正率を設定する際には,地価下落の状況を把握する必要があるため,設定は複数回に及ぶ可能性もある。国土交通省が9月頃に公表する「都道府県地価調査」は,7月1日時点の地価を確認できるため,1月から6月までの地価下落を把握できる。それ以降の地価下落の状況については,国土交通省が3月頃に公表する「地価公示」で1月1日時点の地価を確認する必要がある。そのため,今年6月までの相続等に係る申告には10月以降に設定される補正率を使い,必要があれば,7月から12月に係る補正率は,来年3月頃以降に設定される見込みだ。

 また,補正率が設定された場合は,申告期限の延長も検討されるようだ。相続税の申告は,相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があるため(相法27@),1月頃に相続が生じていた場合などは,補正率の設定が申告期限に間に合わない可能性が考えられるからだ。

 ただし,これらはあくまで令和2年分の路線価に対する措置として検討されている。



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