最高裁判所は4月19日、不動産の相続税評価を巡る財産評価基本通達6項に基づく鑑定評価額の適用の是非等が争われた事件で、原審同様に国側の鑑定評価額を認め、納税者側の上告を棄却した。今年3月15日に最高裁で弁論が開かれたため、納税者側の逆転勝訴とみる向きもあったが、同判決により納税者側の敗訴が確定した。最高裁で、同6項の適用を是認する判決がされたのは初めてのようだ。
本件では、共同相続人である上告人らが、相続により取得した不動産(本件各不動産=甲不動産・乙不動産)について、財産評価基本通達(評価通達)の定める方法で評価した価額(本件各通達評価額)で相続税の申告を行った。これに対し、国側が評価通達6項に基づく鑑定による評価額(本件各鑑定評価額)で評価すべきとして更正処分等をした。本件は、上告人らが前述の更正処分等の取消しを求めたもの。
本件各不動産は、被相続人が相続開始直前期に銀行からの多額の借入れで購入したもので、被相続人が自身の相続に係る相続税につき、上告人らの相続税の負担を著しく軽減させることを期待して、あえて企画し実行したものとされる。本来であれば本件相続に係る課税価格の合計額が6億円を超えるものであったところ、総額14億円弱となる本件各不動産の購入と銀行借入れが行われたことにより、本件各不動産の価額を本件各通達評価額で評価すると、本件相続に係る課税価格の合計額が2,826万1,000円と大幅に圧縮され、基礎控除の結果、相続税の申告額は0円になっていた。
最高裁は、本件各不動産について、本件各通達評価額と本件各鑑定評価額の価格の大きなかい離だけでなく、近い将来に発生することが予想される相続税の節税のために、あえて本件各不動産の購入と銀行借入れを企画し実行したものであると認められるとして、同6項の適用は適法であると判示した。
【参考】財産評価基本通達6項(この通達の定めにより難い場合の評価)
この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。 |
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