財産評価基本通達では、純資産価額方式によって取引相場のない株式を評価する場合の純資産価額は、課税時期における資産および負債によって算定することを原則としています。したがって、平成21年3月20日における仮決算を行って算定するのが原則ですが、評価会社が課税時期において仮決算を行っていない場合には、直前期末から課税時期までの間に資産および負債に著しい増減がないことを条件として、直前期末の数値を用いて純資産価額を計算することが認められています。
また、課税時期が直後期末に非常に近い場合には、同様に課税時期から直後期末までの間に資産および負債の金額に著しい増減がないことを条件に、直後期末の資産および負債の金額を用いることも認められています。
ご紹介の場合には、直後期末までわずか10日余りであり、直後期末の資産および負債から純資産価額を計算するのが実態にも合っているものと考えます。
資産および負債の著しい増減が、どの程度のものをいうのかは明らかにされていませんが、課税時期から期末までの間に、A社の株式の評価に大きな影響を及ぼす取引等がなされていなければ特に問題とされることはないと考えます。
なお、類似業種比準価額方式によって株式を評価する場合には、課税時期の直前期末の決算を基にして比準三要素を算定することとされており、直後期末の決算を用いることはできません。これは、類似業種の比準三要素が、上場会社の前年に終了した直近の事業年度以前一年間の数値を基にして計算されていることから、評価会社の比準要素の算定時期をできるだけそれに近づけるためであり、注意を要します。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
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