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(11.11/1更新) |
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被相続人の法定相続人は、長女と次女の2名であり、相続財産である土地建物を2分の1づつの共有持分として相続することで合意し、相続登記も2分の1づつで行いました。その後、やはり妹一人の所有にしたいということで、共有による遺産分割を合意解除し、妹一人の所有として登記を行いました。この一連の行為は、相続税の申告期限前に行われています。このような場合、相続税の申告は、やり直した遺産分割による相続分に基づいて行っても問題ないでしょうか。それとも、やり直しの遺産分割は、姉から妹への贈与とみなされるのでしょうか。 |
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相続税法基本通達19の2−8では、「当初の分割により共同相続人または包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は分割により取得したものとはならない」ことを留意的に明らかにし、贈与に該当するとしています。
これに対して、平成2年の民事訴訟に関する最高裁判決では、「すでに成立している遺産分割協議の全部または一部を相続人全員の合意により解除した後、改めて遺産分割を成立させたことにより取得した財産は、相続開始時に遡って相続により取得した財産である」と判示し、相続によって取得したものと判断しています。
さらに、平成11年の東京地裁の贈与税課税処分をめぐる判決では、平成2年の最高裁判決を踏まえたうえで、「再度の分割協議が当初の分割協議により帰属の確定した財産を分割協議の名の下に移転すると認められる場合には、その原因を相続によるということはできず、当初の遺産分割協議の合意解除および再度の遺産分割協議の成立が無制限に認められるものではない」と判断し、贈与税を課税した税務署の処分を支持しています。
ご照会の分割協議のやり直しが「帰属の確定した財産を分割協議の名の下に移転した」場合に該当すれば贈与税の課税の対象になりますが、そうであるかどうかは事実認定の問題であり、確答することは困難です。しかし、移転が相続税の申告前に行われていることからすれば、相続による取得と解する余地はあるものと考えます。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
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