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(12.3/1更新) |
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被相続人甲は、平成23年4月に死亡しましたが、法定相続人はいません。甲の相続財産は、預金1億1,000万円であり、甲は以下の内容の公正証書遺言を残しています。
一 預金のうち6,000万円をA社会福祉法人に寄附する。
二 残りの5,000万円は、親戚(相続人ではない)のB、C、D、E、Fの5名に1,000万円ずつ遺贈する。
ところで、1,000万円を遺贈された親戚のBは甲の死亡の1年ほど前に死亡しております。Bの相続人は、配偶者と子です。
このような場合、Bが遺贈を受けた1,000万円は、Bの相続人が取得することになるのでしょうか。また、甲の相続税の計算上は、法定相続人がいないため、基礎控除額は5,000万円となるのでしょうか。
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相続が発生し、相続人が存在することが明らかでない場合には、その相続財産は法人(相続財産法人)になります。その相続財産法人について、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求によって、相続財産の管理人を選定します。事例の場合には、A社会福祉法人および存命しているC、D、E、Fが利害関係人に該当すると考えます。
相続財産の管理人は、債権者等や受遺者からの請求に基づいて弁済をし、家庭裁判所が特別縁故者への財産分与を決定した場合には、その財産分与をし、処分されずに残った相続財産は国庫に帰属することになっています。
事例の場合には、A社会福祉法人およびBら5名が受遺者ですが、Bは被相続人の死亡よりも前に死亡しているとのことですので、民法994条の規定によって、Bに対する遺贈の効力は生じません。遺贈はBの相続人に代襲されることはありません。
このため、事例の場合には、被相続人に債権者がいなければ、受遺者であるA社会福祉法人に5,000万円、Bを除くC以下4名の親戚に1,000万円ずつが弁済されることになります。
そのうえで、甲に財産分与を受ける特別縁故者がいなければ、残りの1,000万円は、国庫に帰属することになります。
また、甲の相続税に関しては、A社会福祉法人への遺贈は、公益法人への遺贈ですから、国等に相続財産を寄付した場合の相続税の非課税の特例が適用されるものと考えます。さらに、国庫に帰属する1,000万円は、国には納税義務はありませんので、相続税の課税財産から除外されます。
一方、甲には法定相続人がいませんから、甲の相続税の基礎控除額は、5,000万円となります。甲の相続税の課税財産は、C以下4名の親戚に遺贈される4,000万円ですが、基礎控除額以下であり、相続税の申告義務はありません。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
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