
 

相続時精算課税制度(その1) |
(15.9/25更新) |
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1.受験と実務の違い 受験において相続時精算課税制度は、贈与税額を計算する問題若しくは相続税の課税財産として相続税を計算する問題又は法令上の規定を記述する理論問題で出題されると思われる。すなわち贈与を実行した場合いの計算又は暗記した法令の記述を坦々とこなすことになる。
一方、実務において相続時精算課税制度は実行に当たっての留意点が多くあり、それを顧客に説明し、顧客の理解と了解を得たうえで実行する。その事前説明(提案)が重要である。
<相続時精算課税制度の留意点>
2.養子は適用対象者となるか
(1)民法第809条では「養子は縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。」と規定されている。したがって、養子も一親等の血族であり、推定相続人であるので、その者の選択により相続時精算課税適用対象者となることができる。
(2)相続時精算課税適用上は養子の数に制限はない。
(3)養子は養親との間で親子関係があるとともに実父母とも親子関係がある。相続時精算課税の選択は養親、実父母それぞれにおいて選択できる。
(4)養子になった年については、養子となることにより推定相続人となった時より前の贈与は相続時精算課税の対象とならず、それ以後の贈与が精算課税の対象となる。この場合、養子となった者の年齢は、その年1月1日現在で20歳以上でないと要件を満たしたことにならない。
(5)養子が相続時精算課税の選択をして特定贈与者から財産の贈与を受けた後、特定贈与者の推定相続人でなくなった場合、その推定相続人でなくなった以後に特定贈与者からの贈与があった場合においても相続時精算課税の適用がある。
※ 暦年課税に戻ることはできない。特定贈与者の相続開始時の相続税計算の際の2割加算の計算に留意する必要がある。
3.暦年課税の戻れるか
特定贈与者からの贈与について、相続時精算課税制度を選択した場合には、選択後のその特定贈与者からの贈与はすべて相続時精算課税の対象とされる。相続時精算課税制度を選択するということは、後戻りができない片道キップを選択するということである
4.非上場株式等についての贈与税の納税猶予(措法70の7)の適用は受けられるか 適用要件を満たせば受けられる。なお、非上場株式等について納税猶予(措法70の7)の適用を受ける場合には、その非上場株式等については、相続時精算課税の規定は適用されず、暦年課税の計算方法により納税猶予額が算出される。
5.相続時精算課税適用者が特定贈与者より先に死亡した場合の取扱い 相続時精算課税適用者が特定贈与者より先に死亡した場合には、相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含む。)が、特定贈与者の相続税に関して、その死亡した相続時精算課税適用者の権利・義務を承継することになる。ただし、相続時精算課税適用者の相続人が特定贈与者本人である場合(相続人が第2順位の親の場合)には、その特定贈与者は権利・義務を承継しない。
6.小規模宅地等の減額特例(措法69の4)の適用は受けられるか 受けることはできない。したがって、小規模宅地等の減額特例(措法69の4)適用を受ける予定の宅地は相続時まで所有し続けるしかない。
7.物納できるか
物納できない。
従来から相続開始前3年以内の贈与財産として生前贈与加算される財産は物納できることとされている。また、その贈与財産により取得した財産も物納の対象になる。しかし、相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産は物納できないことに留意が必要である。
8.相続後売却した場合に取得費加算(措法39)の適用を受けることができるか
贈与財産を、相続税の申告期限後3年を経過する日までに譲渡するなど要件を満たせば相続税額の取得費加算(措法39)の適用は受けられる。
9.相続税の節税対策として活用することはできるか
相続時精算課税制度は、制度そのものにはもともと節税効果はない。この制度では相続税・贈与税が一体で課税されるため、正味財産を小さくする効果は期待できない。それを前提に活用を検討すべきである。
10.その他の留意点
遺産分割を生前に確定したい場合、とりあえず贈与税を少なくするために本制度を活用することは考えられる。ただし、相続開始時に相続税の負担、それに伴う連帯納付義務、また、民法における遺留分などの問題などが発生する可能性がある。
<実務の留意点>
上記の相続時精算課税制度の留意点を踏まえて顧客に説明し、その説明に了解したことを証する書類を貰うなどの手当てをした方が良いと思う。
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