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【特設】『ウェブ版 資産税通信』(配信・運営:税務研究会)

今月の資産税ニュース

国税庁 配偶者居住権等の消滅に係る譲渡所得の課税区分等を示す (20/10/7更新)
 

 国税庁は7月8日,「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について」(法令解釈通達)を公表した。同改正通達は,令和2年度税制改正に対応したものであり,対価を得て配偶者居住権及び配偶者敷地利用権(配偶者居住権等)を消滅させた場合の譲渡所得の課税区分等が明らかにされている。
 配偶者居住権は,民法改正により創設された配偶者の居住権保護のための方策であり,一定の要件を満たした場合に,終身又は一定期間,配偶者に被相続人の所有建物の使用及び収益を認める権利である。(民法1028等)。同権は譲渡することはできないが,合意解除等により消滅させることは可能だ。
 配偶者敷地利用権は,当該居住建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む)を配偶者居住権に基づき使用する権利を指す(相法23の2)。
 ところで,配偶者居住権等の消滅に伴い,対価を得た場合の譲渡所得の課税区分が総合課税,分離課税のどちらに該当するのかということが議論されていた。
 特に,配偶者敷地利用権は,令和元年度税制改正の財務省解説において「土地の上に存する権利」に該当するため,小規模宅地特例の対象となる旨が示されており(財務省「令和元年度税制改正の解説」539頁),分離課税と考える実務家も多かったが,改正租税特別措置法関係通達では次の旨が示されている。
・配偶者居住権(配偶者敷地利用権を含む)は,分離課税とされる譲渡所得の基因となる資産に含まれない(新設:措通31・32共-1)。
 したがって,配偶者居住権及び配偶者敷地利用権のいずれも“総合課税”となる。
 同改正通達では,配偶者居住権等が消滅した場合の建物又は土地等の所有期間の判定(新設:措通31・32共-7)なども示された。このほか,一定の場合において「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例等」や「換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例」の適用が可能となった点を踏まえた通達の整備も行われている。
 また,改正所得税基本通達では,配偶者居住権等の消滅により支払を受ける対価の額が譲渡所得に係る収入金額(所令95)に該当すると新たに明示したほか(新設:所基通33-6の8),取得費についても所要の整備が行われた。



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