第271回 中小事業者等の固定資産税に係る特例措置の改正
2025年7月1日
■はじめに
中小事業者等が、機械装置その他の一定の設備を取得したときは、一定の要件を満たしたものについて、固定資産税が軽減される特例措置が置かれています。
令和7年度税制改正により、期限の延長が行われるとともに、内容が改められている点に留意が必要です。
■特例措置の対象となる事業者
中小事業者等の固定資産税の特例措置とは、資本金1億円以下の一定の中小事業者等(注)が、市区町村の認定を受けた計画に基づいて取得した一定の機械装置、器具備品、建物附属設備などについて固定資産税が軽減される措置です。中小事業者等のうち、先端設備等導入計画の市区町村による認定を受けた者(大企業の子会社を除く)が対象になります。
(注)対象となる中小事業者等とは、具体的には、次の要件を満たす法人または個人です。
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■対象となる設備
年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれる投資計画に記載された投資目的を達成するために必要不可欠な次の①から④の設備が対象になります。
【対象となる減価償却資産の種類(最低取得価格)】
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従来と同様に、中小企業等経営強化法に規定する市区町村の導入促進基本計画に適合し、かつ、労働生産性を年平均3%以上向上させる内容であること、投資利益率が5%以上となることが見込まれている投資計画に記載された一定の設備であることが要件とされます。
■適用を受けるための手続
1. 基本的な手続
認定経営革新等支援機関(注)による事前確認を受けた後、先端設備等の導入先の市区町村に対し、先端設備等導入計画の申請を行います。対象設備が投資利益率の要件を満たすことについて、申請前に認定経営革新等支援機関による事前確認を受ける必要があります。
(注)認定経営革新等支援機関とは、商工会議所、商工会、中央会、地域金融機関、士業等の専門家などで、経営革新等支援機関の認定を受けた者です。
市区町村から認定を受けた後に、設備を取得しなければならない点に留意する必要があります。また、税務申告の際は所定の書類を添付する必要があります。
2. 令和7年度税制改正による追加的な要件
令和7年度税制改正により、賃上げ目標の計画への位置づけが必須とされました。赤字企業を含めた中小企業の前向きな投資を後押しするため、賃上げを行う企業を対象に、赤字黒字を問わず設備投資に伴う負担を軽減する趣旨のものであり、固定資産税の特例措置の適用期限が2年間延長されるとともに、賃上げ率に応じて、軽減率を引き上げる内容に改められました。雇用者給与等支給額の増加割合が1.5%以上となることを計画に位置付けるとともに、労働者に表明することが必要です。
雇用者給与等支給額が1.5%以上増加することを表明した場合は、課税標準を3年間1/2に軽減、雇用者給与等支給額が3.0%以上増加することを表明した場合は、課税標準を5年間1/4に軽減するものとされました。
雇用者給与等支給額が1.5%以上増加することを表明した場合 |
課税標準を3年間1/2に軽減 |
雇用者給与等支給額が3.0%以上増加することを表明した場合 |
課税標準を5年間1/4に軽減 |
令和9年3月31日までに取得した資産について適用されます。