【ホールディングス化】企業価値向上にあたって持株会社に求められる役割
[あいわ税理士法人 News Letter 2025.7]

【ホールディングス化】企業価値向上にあたって持株会社に求められる役割

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1.はじめに


近年、上場会社のみならず非上場会社においても持株会社体制を導入するケースが増えています。持株会社体制には主に①監督と事業執行の分離、②シナジー効果による価値創出、③M&A の推進などのメリットがあり、また、子会社の不祥事防止策等のグループガバナンスの在り方に対する世間の関心が高まっていることも、持株会社が増えている要因と考えられます。しかし、持株会社体制を構築しただけでは、これらのメリットの享受や世間の関心に対する最適な対応ができるわけではありません。戦略的・制度的・組織的な観点から持株会社に求められる役割を認識し、組織として機能していくことが重要となります。

今回のニュースレターでは、企業価値向上にあたって持株会社に求められる役割について検討します。

 

2.実質審理の流れ


持株会社には、企業価値向上のためにグループの司令塔としての役割を果たし、子会社が本業に専念できる環境を構築することが求められます。

① 見極める役割

持株会社には、グループ全体の観点で各社の事業を「見極める」役割が求められます。持株会社体制下においては、監督機能は持株会社が持ち、事業執行は子会社へ分離されることになりますが、さらに、複数の事業セグメントがある企業グループにおいてはセグメントごとに子会社が配置されるケースが一般的となります。持株会社は、子会社の事業に対する投資家的な視点を持って各子会社の事業、経営状況を見定め、成⾧事業に対する投資や資金繰りなどを鑑み、適宜経営資源を最適に配分する意思決定が必要になります。

また、意思決定をする上では、各事業の財務状況や経済環境、リスク等の情報を管理・運用していく必要があり、そのためには、持株会社と子会社間、法務・人事・経理といった各部門間をつなぐIT 等のインフラ環境を構築・整備することも必要になります。子会社への支配権を持ちつつ、実際の事業執行は子会社に任せるという柔軟な経営環境の中で、グループ全体が最大の成果をあげるために、どのように各子会社の事業を見極めていくかという役割が持株会社には求められます。

 

② 「つなぐ」役割

持株会社には、グループ全体の価値が各事業会社単独の価値の合計を上回る(=コングロマリット・プレミアム)体制を構築するために、グループ各社を「つなぐ」役割が求められます。そのためには、持株会社は各子会社の強み、各社が保有するノウハウや販売チャネル、技術等の連携によるシナジー効果を検討し、単一の会社では実現できない新たな価値を創出し、高い成⾧性や収益性を実現していく必要があります。また、新規事業の立上げやグループ横断での基礎研究の実施、グループの成⾧を加速させるためのM&A等についても積極的に実行していくこととなります。このように、グループ全体が最大の成果をあげるための体制を構築するために、グループ内・外にかかわらず様々な会社との連携、これまでのグループ内には存在しない新しい技術・サービス等をグループ全体につなげる役割が持株会社には求められます。

 

③ 「まとめる」役割

持株会社にはグループの司令塔としてグループ全体の価値を最大化させるために、グループで保有する経営資源や知見等を効率的に「まとめる」役割が求められます。グループの成⾧には、ヒト・モノ・カネという経営資源を必要なタイミングで最適にグループ全体へ配分する必要があります。子会社が中小規模の場合には信用力の点から自社では経営資源の調達が難しい場合が考えられますが、持株会社の場合には知名度やグループ全体としての信用力によって調達が可能となります。持株会社が調達した経営資源は、成⾧事業への資金配分、経営人材の育成や配置、事業拡大のためのM&A などに有効活用されます。持株会社体制を導入し子会社が増えることで、グループが保有するノウハウ等が分散するリスクもありますが、持株会社がまとめることでグループ全体での有効活用も可能になります。

また、グループが成⾧していく過程では、持株会社が主導でリスク管理や不正防止等のために監督・統制を行い、社会的責任を明確に示すことが大切になります。子会社へ一定の権限を持たせながらも個別最適で行動することがないよう、グループ指針に沿って同じ方向を向かせながらグループ全体をまとめる役割が求められます。

 

 

3.事例にみる持株会社体制の導入目的及び持株会社の役割


上記2で持株会社に求められる役割をまとめましたが、直近で持株会社の導入を検討している会社においては持株会社への役割をどのように考えているのか、IR 情報を通じて見ていきます。

上記IR 情報によれば、持株会社に対して、明確なグループ経営方針の策定、経営資源の有効配分、シナジーの創出、M&A 戦略の検討等を通してグループ全体の成⾧に寄与するための動きを求めていることが分かります。

 

 

5.最後に


今回は企業価値向上にあたって持株会社に求められる役割について、事例を交えながら検討しました。

企業の多角化・グローバル化が進み、また、事業承継問題によるM&A の拡大やコーポレートガバナンスの強化が求められる環境下においては、今後も持株会社体制の導入が増加するであろうと考えられます。持株会社体制の導入には多額の人的・金銭的コストが発生するため、何のために持株会社体制を導入するのか、そのために持株会社および子会社は、どのような役割を果たすべきかをしっかりと検討し、導入したが期待していた効果を得られないという状況にならないようにすることが重要です。

最後になりますが、持株会社は、グループ全体としての企業価値を最大化をするために存在するのだということを、本ニュースレターを通じてご理解頂けたら幸いです。

 

 


 

 

筆者:税理士 佐々木 秀

 

■本ニュースレターについて


本ニュースレターは、一般的な情報提供であり、具体的アドバイスではありません。個別の案件については個別の状況に応じて検討が必要になります。お問い合わせ等がありましたら、下記専門家まで遠慮なくご連絡ください。

ホールディングス化プラクティスグループ(holding-company@aiwa-tax.or.jp
税理士 松田 雄一
税理士 天野 賢司
税理士 佐々木 秀

 

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非上場
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