令和6年度 査察の概要 ほか
【TAX TOPICS|マネジメント倶楽部デジタル9月号】
2025年9月10日
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このコラムでは、掲載月に関連する税の身近なトピックをピックアップして、簡潔にまとめてお届けしています。
毎月3〜4つのトピックを取り上げています。
※本記事は「マネジメント倶楽部デジタル」に掲載されたものです
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令和6年度 査察の概要
国税庁は、令和7年6月18日、「令和6年度 査察の概要」を公表しました。査察制度は、悪質な脱税者に刑事責任を問うことで、一罰百戒の効果を通じて適正・公平な課税と申告納税制度の維持に資することを目的としています。
令和6年度は98件が検察庁に告発され、脱税総額は82億円、1件あたりの脱税額は8,400万円、告発率は65.3%でした。重点的に取り組まれたのは、消費税、無申告、国際事案、社会的波及効果の高い事案です。消費税関係では29件が告発され、そのうち17件が仕入税額控除や輸出免税制度を悪用した不正受還付事案でした。例えば、高価な腕時計を輸出したように装い、安価な腕時計と偽の書類を用いて架空の課税仕入と輸出免税売上を計上し、不正に還付を受けた事案や、トレーディングカードの販売に係る課税売上を申告から除外して消費税を免れた事案がありました。
このほか、海外法人が運営する医薬品等のネット販売事業に係るコンサル報酬を海外預金口座にプールして所得税を免れた国際事案、脱税指南者が給与所得者に対し源泉所得税の不正還付を指南した事案なども告発されています。
令和6年度の査察事件に係る一審判決は99件すべてが有罪判決で、13人に実刑判決が言い渡されました。査察事件単独で最も重いものは懲役2年6月、他の犯罪と併合された事案では懲役9年でした。
令和6年度 再調査の請求、審査請求、訴訟の概要
国税局や税務署の処分に不服がある場合、納税者は「再調査の請求」、「審査請求」といった行政上の救済手続に加え、「訴訟」という司法上の手続をとることができます。
国税庁が令和7年6月20日に公表した資料によると、令和6年度の「再調査の請求」は1,447件(前年度比42.0%減)で、処理件数は1,752件、そのうち納税者の主張が一部または全部認められたものは91件、認容割合は5.2%でした。
「審査請求」は3,537件が発生し、処理件数3,872件のうち、一部認容522件、全部認容171件、合計693件が認容され、認容割合は17.9%と、平成27年以降で最も高くなりました。
納税者は、再調査の請求や審査請求といった行政上の不服申立を経てもなお不服があるときは訴訟の提起ができます。令和6年度の訴訟の発生件数は196件(前年度比3.7%増)で、終結件数は168件、そのうち国側が敗訴したのは8件(一部敗訴3件、全部敗訴5件)、国側敗訴割合は4.8%でした。
プラットフォーム課税とインボイス
令和7(2025)年4月1日以後、国外事業者がデジタルプラットフォームを介して日本の消費者に役務を提供し、その対価を特定プラットフォーム事業者が収受する場合は、その特定プラットフォーム事業者が役務の提供者とみなされ、消費税の申告・納税義務を負うこととなりました。これはいわゆる「プラットフォーム課税」と呼ばれる制度です。
この制度の導入に伴い、適格請求書(インボイス)の発行者が変わる場合があります。国税庁が公表した「インボイスの取扱いに関するご質問(令和7年6月10日更新)」では、次のような取扱いの解説があります。
- プラットフォーム課税の対象とならない取引は、国外事業者であるアプリの配信者が適格請求書を発行することとなります。
- プラットフォーム課税の対象となる取引であれば、特定プラットフォーム事業者が適格
請求書を交付することになります。
なお、国税庁ホームページには「特定プラットフォーム事業者名簿」が掲載されています。令和6年12月6日現在で4事業者(該当するデジタルプラットフォームは6つ)が登録されており、今後の追加・更新にも注意が必要です。
e-Taxの送信ミスに注意
電子申告では、送信時の不備(ミス)により「無申告」とみなされるケースが発生しています。令和6年10月15日の国税不服審判所裁決では、確定申告書の送信が完了していなかった事例について、「正当な理由」が認められず、後日提出された確定申告書の無申告加算税賦課は適法と判断されました。この事例は、納税者が確定申告書と財産債務調書等の送信をしようとしましたが、送信帳票の選択を誤ったため、確定申告書が未送信となり、財産債務調書等のみが送信されたというものです。納税者はシステム上の問題や送信後の画面表示の誤認などを主張しましたが、いずれも認められませんでした。
通則法では、「正当な理由があると認められる場合」には、無申告加算税は賦課されません。例えば、災害、交通や通信の途絶などの客観的な事情が該当します。しかし、今回のように、送信操作の誤りや確認不足の場合には、正当な理由には当たらないと判断されます。
なお、e-Taxの送信後には、「即時通知」と「受信通知」という2つの通知があります。「即時通知」は送信直後に受信の可否や受付番号・受付日時等を画面表示しますが、「受信通知」は、申告内容の形式審査後にメッセージボックスへ格納される通知です。電子申告における最終責任は納税者側にありますので、申告書等を送信した場合には、必ずメッセージボックスの「受信通知」を確認するようにしましょう。
※本コラムでは、さまざまな経営者にとって役立つ記事が集まるデジタル情報誌『マネジメント倶楽部デジタル』に掲載されている記事の一部を公開しています。
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