【子育て支援からカスハラ対応まで!令和8年は法改正ラッシュ】
| 働く人が知っていると得をする社会保険の知識 第35回

2025年11月20日

子育て支援からカスハラ対応まで!令和8年は法改正ラッシュ

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このコラムでは働く皆さんが知っていると得をする社会保険、労働保険、あるいは周辺の労働法関係のテーマを取り扱い、「イザ」というときにみなさんに使っていただくことを狙いとしています。したがって、「読んで終わり」ではなく「思い出して使う」または「周囲の人へのアドバイス」に役立てていただければ幸いです。

さて、最近は影響の大きい改正が続いていますが、働く人が直接影響を受ける社会保険制度、それに労働法関連が来年(令和8年)は大きく変わる見通しとなっています。今回は、すでに改正が決定しているものについて、現段階で判明している内容をダイジェストでお伝えします。企業の担当者だけではなく、働く人すべてに関係する項目もありますので、今のうちに頭に入れておきましょう。

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「子ども・子育て支援金の徴収」(令和8年4月1日)

我が国は少子化・人口減少が危機的な状況にあるため、令和5年12月に「こども未来戦略」が閣議決定され、年間3.6兆円規模の子ども子育て関連の給付を拡充することとしました。これを実現するための財源として「子ども・子育て支援金制度」が創設されました。この支援金は原則として企業や高齢者も含めた全世代・全世帯からの拠出が念頭にあり、具体的には加入の各医療保険料に上乗せして徴収されます。

個々人の具体的な拠出額は加入している医療保険制度や所得・世帯の状況によって異なるため、現時点では参考数値になりますが、医療保険の加入者一人当たりの平均月額については、下表のような試算が公表されています。

令和8年4月から徴収が始まり、上記のように段階的に増額されることが予定されています。

 

 

障害者雇用率(法定雇用率)の引上げ(令和8年7月1日)

障害者雇用促進法により、事業主は雇用する従業員のうち一定割合の障害者(法定雇用率)を雇用しなければなりませんが、この率が2026年4月から2.7%に引き上げになります。

(法定雇用率の推移)

平成30年(2018年) 令和3年(2021年) 令和6年(2024年) 令和8年(2026年)
2.2% 2.3% 2.5% 2.7%

今回の2.7%という数値は従業員数が37.5名以上の会社は雇用義務が発生することになります。従業員数ごとの必要雇用人数は下表を参照して下さい。

従業員数 100人 200人 500人
必要人数 2.7人→2人 5.4人→5人 13.5人→13人
(注)必要人数については、小数点以下の端数切捨て

法定雇用率を達成できない場合は「障害者雇用納付金」が課されます。納付金額は不足1人あたり月額50,000円(年間60万円)です。現状で未達の場合は、自社において具体的な計画(採用時期、採用職種、採用ルート等)を立てることが必要です。

 

 

カスタマーハラスメント対策の義務化(令和8年中)

労働施策総合推進法が令和7年6月11日に改正公布され、いわゆるカスタマーハラスメント等を防止するために会社に雇用管理上必要な措置が義務付けされます。この施行日が公布の日から起算して1年6ヶ月以内の政令で定める日とされているため、計算上、令和8年に実施されます。

【カスタマーハラスメント対策の義務化】

カスタマーハラスメントとは、以下の3つをすべて満たすものとされています。

  1. 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う
  2. 社会通念上許容される範囲を超えた言動により
  3. 労働者の就業環境を害すること

会社が講ずべき具体的な措置の内容等は、今後、指針において示される予定です。

【就活セクハラ防止措置】

求職者等(就職活動中の学生やインターンシップ生等)に対しても、セクシュアルハラスメントを防止するための必要な措置を講じることが会社の義務となります。会社が講ずべき具体的な措置の内容等は、カスタマーハラスメント同様、今後、指針において示される予定です。

 

 

女性活躍推進法の改正(令和8年4月1日)

これまで従業員数301人以上の企業に公表が義務付けられていた「男女間賃金差異」について、101人以上の企業に公表義務が拡大されます。そして新たに「女性管理職比率」についても101人以上の企業に公表が義務化となります(従業員数100人以下は努力義務)。

企業規模 改正前 改正後
301人以上 男女間賃金差異に加えて、2項目以上 を公表 「男女間賃金差異」及び「女性管理職比率」に加えて、2項目以上を公表
101人~300人 1項目以上を公表 「男女間賃金差異」及び「女性管理職比率」に加えて、1項目以上を公表

「男女間賃金差異」は、男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均を割合(パーセント)で示す必要があります。また、「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の区分での公表が必要とされています。この実現のためには新たなデータ管理が必要になると思われます。

 

 

労働安全衛生法の改正(令和8年1月1日から段階的施行)

労働安全衛生法、作業環境測定法の一部が令和7年に改正、令和8年から段階的に施行されます。

(1) 個人事業者等に関する安全衛生対策の推進~個人事業者(フリーランス)等を含む作業者が混在する事業場での災害防止対策の強化等(令和8年1月1日から段階的施行)

(2) 職場のメンタルヘルス~50人未満のメンタルヘルスチェックの義務化(公布後3年以内)

(3) 化学物質による健康障害の防止~危険有害性物質の情報通知義務の罰則強化、営業秘密である化学物質の代替化学名での通知容認、個人ばく露測定の位置づけ等。

(4) 機械等労働災害の防止の促進~民間登録機関の検査範囲拡大(令和8年1月1日)、登録機関や検査業者の検査基準の遵守義務(令和8年4月1日)

 

労基法も改正予定?!

現段階でも予定されている改正項目が多いため、早めに内容を理解し、対応を検討しておくことをお勧めします。また、上記以外にも労働基準法が約40年ぶりの大改正予定で審議中です。その内容についても、このコーナーで掲載していく予定です。

 

 

 

 

 

 

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特定社会保険労務士小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。

» ホームページ 社会保険労務士法人ソリューション

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