第234回 租税特別措置の適用除外に係る改正
2022年6月1日
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■租税特別措置の適用除外
平成30年度税制改正により、企業収益が増大している租税特別措置法上の中小企業者および農業協同組合等以外の法人(以下、「大法人」)のうち賃金引上げや国内設備投資に消極的なものに対して、果断な経営判断を促すためという趣旨により、試験研究費の税額控除制度を始めとする生産性の向上に関する一定の税額控除制度の適用を制限することとされました。また、令和3年税制改正において、3年間期限が延長されています。
すなわち、大法人について、平成30年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において、次に掲げる要件のいずれにも該当しない場合には、その大法人には、後で説明する一定の税額控除制度を適用することができないとされます(措法42条の13第5項)。
租税特別措置の適用除外に係る一定の要件(次の(1)から(3)のいずれも満たさないこと)
(1)その法人の継続雇用者給与等支給額が、継続雇用者比較給与等支給額を超えること(注1) (2)その法人の国内設備投資額が、当期償却費総額の30%を超えること (3)当期の所得の金額が前期の所得の金額以下であること(注2) |
(注1) 継続雇用者給与等支給額および継続雇用者比較給与等支給額の算定上、給与等に充てるため他の者から支払を受けた金額を控除しますが、雇用安定助成金額は控除しません。
(注2)所得の金額については、繰越欠損金の控除前の金額とします。
上記の(1)から(3)のいずれにも該当しない大法人について、一定の税額控除制度の適用に制限がかかることになります。
■令和4年度税制改正による要件の厳格化
令和4年度税制改正により、次の改正が行われました。すなわち、①資本金の額または出資金の額が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上である場合および②前事業年度の所得の金額がゼロを超える一定の場合、以上の①および②のいずれにも該当する場合には、次のように上記(1)の継続雇用者給与等支給額に係る要件が厳格化されます。
令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度 | その法人の継続雇用者給与等支給額が、継続雇用者比較給与等支給額に対して0.5%以上増加すること |
令和5年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する事業年度 | その法人の継続雇用者給与等支給額が、継続雇用者比較給与等支給額に対して1%以上増加すること |
■制限がかかる税額控除制度
先の(1)から(3)のいずれの要件も満たさない大法人について、その適用に制限がかかる税額控除制度は、次のとおりです。
一定の要件を満たさない場合に適用除外とされる税額控除制度
・試験研究費の税額控除制度 ・地域未来投資促進税制に係る税額控除制度 ・認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の税額控除(5G導入促進税制) ・事業適応設備を取得した場合等の税額控除制度(デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制に係る税額控除制度およびカーボンニュートラルに向けた投資促進税制に係る税額控除制度) |
■判定に関する明細書の添付
大法人が上記に掲げる税額控除制度のいずれかを適用する場合は、その税額控除制度に必要な別表のほかに、上記の判定に関する明細書である別表6(7)「特定税額控除規定の適用可否の判定に関する明細書」を確定申告書に添付する必要がある点に留意しなければなりません。
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