第236回 機器組込みソフトウェアに係る会計・税務 ~税務調査でも多く指摘~

2022年8月1日

 

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■「機器組込みソフトウェア」とは

機器組込みソフトウェアとは、機械や器具備品等に組み込まれたソフトウェアをいいます。機械や器具備品等のハードウェアの中に組み込まれ、ハードウェアと一体となって機能するものが最近では増えています。この機器組込みソフトウェアの会計および税務処理には留意が必要です。

 

■機器組込みソフトウェアに係る会計処理

日本公認会計士協会から公表されている会計制度委員会報告第12号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(以下、「会計制度委員会報告第12号」)17項では、「有機的一体として機能する機器組込みソフトウェア(機械、器具備品等に組み込まれているソフトウェア)は独立した科目として区分するのではなく、当該機械等の取得原価に算入し、「機械及び装置」等の科目を用いて処理する。」と定められています。

「有機的一体として機能する」という部分が少しわかりにくいと思われますが、次のような意味であると解されます。すなわち、そのハードウェア専用に開発されているソフトウェアであり、抜き出して別のハードウェアに利用することが想定されないもの、そのソフトウェアなしでそのハードウェアが動作しないものであると考えることができます。

例えば、NC旋盤を例にすると、機械に指示を送るための「加工プログラム」が存在し、このプログラムをNC装置が認識し、各サーボモータに指示を送ることで高精度の加工が行われます。そのソフトウェアなしでそのハードウェアは動作しません。NC旋盤に組み込まれている専用ソフトウェアは、正に有機的一体として機能する機器組込みソフトウェアとしてハードウェアに含めて取り扱うべきものと考えられます。

また、ハードウェアの基本的な制御を行うために機器に組み込まれた「ファームウェア」についても、①機器とソフトウェアが相互に有機的一体として機能すること、両者は別個では何ら機能せず一体として初めて機能すること、②経済的耐用年数も両者に相互関連性が高いこと、以上の理由により、ソフトウェアを区分しないで機械装置に含めて取り扱うものとされます(会計制度委員会報告第12号41項)。

 

■機器組込みソフトウェアに係る税務処理

会計制度委員会報告第12号は、会計上の取扱いを定めたものですが、法人税法上も同様に解されます。

この点、週刊税務通信No.3572(2019年9月16日号)に「機械装置にソフトウェアが組み込まれている場合、全体を機械装置と認識して償却限度額を計算すべきとの(税務調査での)指摘を受けるケースが多くあるようだ。」との記事が掲載されています。「機械装置に組み込まれたソフトウェア」の取扱いは、ソフトウェアの使用が、機械装置と一体不可分といえるか否かをポイントの一つとして判断するという考え方になります。この考え方は、先の会計上の考え方と実質同様であると考えられます。

機械装置と一体不可分であるにもかかわらず、ソフトウェアを区分して、5年の定額法で償却した場合、機械装置の耐用年数は5年を超えるものが多いため、全体を機械装置と認識して償却限度額を計算する場合に比べて、償却額が多く計算される結果になります。そのため、税務調査で指摘を受けることが多いものと考えられます。

 

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