第238回 インボイス制度下において銀行等から役務提供を受けた場合の仕入税額控除の取扱い
2022年10月1日
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銀行等の金融機関から振込サービス等の役務提供を受けた場合、その手数料に係る仕入税額控除を受けるためには、その手続の態様に応じた対応が求められることになります。大きく、①窓口で手続をした場合、②ネットバンキングで手続をした場合、③ATMを利用して手続をした場合に分けて、整理する必要があると考えられます。
■窓口で手続をした場合
銀行等の窓口で振込の手続をした場合、振込手数料について領収書の交付を受けることになります。窓口での業務は、不特定多数の者に対して資産の譲渡等を行う事業に該当すると解されるため、適格請求書ではなく適格簡易請求書の交付を受けることで足りると考えられます。適格簡易請求書および帳簿の保存により、振込手数料等の課税仕入れについて仕入税額控除が認められると考えられます。
■ATMを利用して手続をした場合
銀行等のATMによる手数料を対価とする入出金サービスや振込サービス等は、一の機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結するものに該当しますので、自動販売機・自動サービス機特例の対象になります。
帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められますが、帳簿の記載事項として、例えば「自動販売機・自動サービス機特例」および仕入の相手先(銀行等)の所在地の記載が必要になります。
なお、帳簿に記載する課税仕入れの相手方の所在地ですが、本来は課税仕入れの相手方である資産の譲渡等を行った事業者の所在地を記載することになりますが、自動販売機・自動サービス機特例の対象となる場合は、その設置場所を記載する対応でも問題はないと考えられます。すなわち、課税仕入れの相手方である資産の譲渡等を行った事業者の所在地または自動販売機・自動サービス機の設置場所のいずれかを記載すれば問題ないと考えられます。また、自動販売機・自動サービス機の設置場所を記載する場合は、「〇〇銀行〇〇支店 ATM」のように記載する対応で問題ないと考えられます。
■ネットバンキングで手続をした場合
ネットバンキングで振込の手続をした場合、一の機械装置のみで代金の受領と資産の譲渡等が行われるものに該当しないため、自動販売機・自動サービス機特例の対象にはなりません。原則として、振込手数料等の課税仕入れについて仕入税額控除が認められるためには、帳簿および適格請求書等の保存が必要になります。
なお、適格請求書ではなく適格簡易請求書でよいとされるかどうかについて、国税庁において検討が行われているようであり、今後の動向に留意が必要です。
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