第244回 特定中小会社が設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等(スタートアップ支援)の特例税制創設
2023年4月1日
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■スタートアップ支援の特例税制創設
令和5年度税制改正には、企業のスタートアップ支援を図る税制措置が盛り込まれています。その中でも資金の集まりにくい創業初期のプレシード・シード期におけるエンジェル投資家からの出資を支援する新たな税制措置が講じられます。
なお、本稿の執筆時点では税制改正法案はまだ成立していません。成立段階の法令等の内容を再確認していただければと思います。
■新たな税制措置の内容
エンジェル投資家が、スタートアップ企業の株式を取得した場合に、税務上のメリットを享受できる措置が講じられます。令和5年4月1日以後に、その設立の日の属する年の12月31日において中小企業等経営強化法6条に規定する特定新規中小企業者に該当する株式会社で、その設立の日以後の期間が1年未満であることその他財務省令で定める要件を満たすものにより設立に際して発行される株式(以下、「設立特定株式」)を払込みにより取得した居住者または恒久的施設を有する非居住者について、その取得をした年分の一般株式等に係る譲渡所得等の金額または上場株式等に係る譲渡所得等の金額からその設立特定株式の取得価額を控除することが認められます(措法(案)37条の13の2第1項)。
また、その設立特定株式の取得価額についても、20億円を超える場合のみ、その超過額を控除する取扱いとなります。
投資段階の控除 |
設立特定株式(スタートアップ企業が設立に際して発行する株式)を払込みにより取得した居住者等(注)について、その取得をした年分の一般株式等に係る譲渡所得等の金額または上場株式等に係る譲渡所得等の金額からその特定株式の取得に要した金額の合計額を控除します。 →上場株式等の譲渡益がある年に、スタートアップ企業の株式を取得すると、譲渡益を圧縮できるメリットが生じることになります。 |
取得価額の調整の取扱い |
上記の控除の特例を適用した特定株式の取得価額は、その取得に要した金額から上記の控除額のうち20億円を超える部分の金額を控除した金額とします。
→20億円を超える金額があるときは、その超過額だけ将来特定株式を譲渡したときの譲渡益が多くなる(20億円を超える部分は、課税の繰延)。 |
(注) 当該スタートアップ企業の発起人に該当することおよび当該企業に自らが営んでいた事業の全部を承継させた個人等に該当しないことその他の要件を満たすものに限ります。
投資額のうち20億円までは非課税、20億円を超える場合であっても、超える部分について課税の繰延になるという意味になります。
【計算例】
前提条件
3億円で購入した上場株式等を28億円で売却しました。売却資金を元手にして税制優遇が受けられるスタートアップ企業に23億円を投資しました。
〇所得税の計算(復興特別所得税は除きます)
(売却額28億円-取得価額3億円-控除額23億円)×所得税率(15%)=3,000万円が課税対象
〇「スタートアップ株式の取得価額」
取得価額23億円-(23億円-20億円)=20億円
この場合、スタートアップ株式を将来譲渡したときに、3億円(23億円-20億円)は実質課税されることになります。
■スタートアップ企業の要件
対象となるスタートアップ企業の要件は、次のとおりです。詳細は、今後公布される予定の財務省令(租税特別措置法施行規則)の規定をご確認いただければと思います。
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なお、特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等の適用対象となる株式の範囲に、本設立特定株式が追加されます(措法(案)37条の13の3第1項)。
本特例税制は、エンジェル税制との選択適用とされます。エンジェル税制についても、令和5年度税制改正により、投資時にエンジェル税制の適用を受けた株式を譲渡した場合の取得価額の調整計算に優遇措置が置かれる予定です。
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