第246回 賃借建物に対する造作の耐用年数の取扱い
~追加の造作が行われる場合の処理を含む~

2023年6月1日

 

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■他人から賃借した建物に対する造作の耐用年数

法人が建物を貸借し自己の用に供するため造作した場合の造作に要した金額は、当該造作が、建物についてされたときは、当該建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に見積った耐用年数により、建物附属設備についてされたときは、建物附属設備の耐用年数により償却します。ただし、当該建物について賃借期間の定めがあるもの(賃借期間の更新のできないものに限る)で、かつ、有益費の請求または買取請求をすることができないものについては、当該賃借期間を耐用年数として償却することができるとされています(耐通達1-1-3の本文)。

また、同一の建物についてした造作は、その耐用年数は個々にこれを適用するわけではなく、そのすべてを一の資産として償却し、その耐用年数は、その造作全部を総合して見積もることに留意するとされています(同通達の注)。

同一の建物に対して行った造作については、造作全体を一の資産として、1つの耐用年数を見積もる点に留意する必要があります。

 

■建物に対して造作をしたときの耐用年数の見積り

造作が建物附属設備に対して行われる場合は少なく、建物に対して行われる場合が多いと思われます。建物に対して行われた造作については、税務上、定額法が適用されますが、そのときの耐用年数が問題となります。先の通達では、建物についてした造作は、その建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に見積もった耐用年数により償却するとされていますが、その具体的な方法が問題になります。

造作全部について1つの耐用年数を見積もることになりますが、加重平均の方法によって見積もることが考えられます。加重平均の方法とは、ガラス戸、床防水タイル等のように造作の種類、材質に区分し、それぞれの個別耐用年数による年当たり要償却費を計算し、その加重平均により、造作全部を1つの資産として総合して耐用年数を見積もる方法です。

 

■耐用年数の見積りの具体例

以下、具体例により説明します。

造作がA、B、Cの3種類から成り、それぞれの取得価額および個別耐用年数が次の通りであったものとします。

A : 5,000,000円  8年

B : 2,800,000円  5年

C : 6,000,000円  10年

この場合は、次のように造作の種類ごとの年当たり要償却費を計算した上で、それらを合計し、全体の取得価額をその合計額で除して加重平均の耐用年数を算出します。

 

造作の種類 取得価額 個別耐用年数 年当たり要償却費
A 5,000,000円 8年 625,000円
B 2,800,000円 5年 560,000円
C 6,000,000円 10年 600,000円
合計 13,800,000円 1,785,000円

 

この造作全体(AからC)の耐用年数は13,800,000円÷1,785,000円=7年(1年未満の端数切捨て)になります。

 

■追加の造作が行われる場合

いったん造作を行ったが、その後使用してみた結果、追加の造作が行われる場合があります。この場合の処理が問題になります。

この場合は、次の計算例のように、既存の造作と追加の造作を合わせて、再度造作全体について耐用年数の見積りを行うことになると考えられます。

 

追加の造作

D : 2,400,000円 6年

E : 3,500,000円 5年

 

造作の種類 取得価額 個別耐用年数 年当たり要償却費
A 5,000,000円 8年 625,000円
B 2,800,000円 5年 560,000円
C 6,000,000円 10年 600,000円
D 2,400,000円 6年 400,000円
E 3,500,000円 5年 700,000円
合計 19,700,000円 2,885,000円

 

この造作全体(AからE)の耐用年数は19,700,000円÷2,885,000円=6年(1年未満の端数切捨て)になります。

 

前期までの償却費は確定決算に反映されていますので、当然そのままであり、追加の造作D、Eを行い事業の用に供した事業年度以後の各事業年度について当該造作全体に対して6年の耐用年数で償却することになると考えられます。

 

 

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