第252回 合同会社の定款には要注意

2023年12月1日

 

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■合同会社の定款

合同会社の定款の作成については、株式会社の場合と異なり、公証人の認証手続は不要です。定款の認証手数料が必要ないことになります。利害関係者の数が少なく、複雑な法律関係が生じる可能性が低いことから、あえて要求されていないと考えられます。また、書面で作成せず、電子定款とする場合は、印紙税も不要となり、低コストで対応することができます。

 

■絶対的記載事項と相対的記載事項

定款の記載事項には、絶対的記載事項と相対的記載事項があります。絶対的記載事項とはそのうちの1つでも記載事項を欠くと、定款自体が無効になってしまうものをいい、合同会社の場合は、①目的、②商号、③本店の所在地、④社員の氏名または名称および住所または所在地、⑤社員の全部を有限責任社員とする旨および⑥社員の出資の目的(社員の全部が有限責任社員であるため、金銭等に限られる)およびその価額または評価の基準、以上の6つになります。

一方、相対的記載事項とは、定款に記載がなくても、定款自体が無効になることはありませんが、定款に記載がなければその効力を生じない事項をいいます。これには、①会社法が相対的記載事項であるとして規定しているもの、および②会社法は規定していないが、社員の利益に重大な影響があるため記載を要すると解されるものの2つがあります。

 

■相対的記載事項の例示

会社法が相対的記載事項として規定しているものにはいくつかありますが、例えば次のようなものが挙げられます。下記に掲げるものは、あくまでも会社法が規定しているもののうちの一部に過ぎない点にご留意ください。

  1. 社員の持分譲渡については、他の社員全員の承諾がなければ他人に譲渡することができないとされていますが、定款でこれと異なる定めをすることができます(会社法585条4項)。例えば、総社員の過半数の同意があれば譲渡することができると定めることは可能です。
  2. 各社員が業務執行権を有し、社員が2人以上あるときは、業務執行に関する意思決定はその過半数をもって決定するとされていますが、定款でこれと異なる定めをすることができます(会社法590条1項、2項)。例えば、一定の業務については、特定の社員が単独で決定できると定めることも可能ですし、逆に社員全員の同意がなければ決定することができない業務を定めることもできます。
  3. 業務執行社員を定款で定めた場合において、業務執行社員が2人以上あるときは、合同会社の業務は業務執行社員の過半数をもって決定するのが原則ですが、定款にこれと異なる定めをすることができます(会社法591条1項)。
  4. 社員が死亡した場合は、当該社員の相続人はその持分を承継することができないのが原則ですが、承継する旨を定款で定めることができます(会社法608条1項)。

 

■同族会社であるときの留意点

上記の4. に掲げるように、社員が死亡した場合は、当該社員の相続人はその持分を承継することができないのが原則とされていますが、持分を承継する旨を定款で定めることができます。合同会社が同族会社である場合、この定款の定めがないと、オーナーが死亡したときにオーナーの持分が後継者に承継されないという致命的な問題が生じます。この点のみをもってしても、合同会社については、定款に相対的記載事項として何を定めるべきなのかという点が極めて重要であることがわかります。

司法書士が用意した定款のひな型をそのまま用いるということは、合同会社に関してはあってはならないという点を十分にご理解いただければと思います。

 

 

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