第258回 令和6年度税制改正後の「租税特別措置の適用除外」のポイント・留意点

2024年6月1日

 

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■「租税特別措置の適用除外」の趣旨

「租税特別措置の適用除外」の趣旨は、次のとおりです。すなわち、企業収益が増大している租税特別措置法上の中小企業者および農業協同組合等以外の法人(以下、「大法人」といいます)のうち賃金引上げや国内設備投資に消極的なものに対して、果断な経営判断を促すためという趣旨により、試験研究費の税額控除制度を始めとする生産性の向上に関する一定の租税特別措置(税額控除制度)の適用を制限することとされています。

改正前の取扱いによれば、次の①から③のいずれにも該当しない大法人について、制限がかかるとされていました。

 

租税特別措置の適用除外に係る一定の要件

① その法人の継続雇用者給与等支給額が、継続雇用者比較給与等支給額を超えること

(令和4年度税制改正において、一定の大企業について、当該要件を厳格化する改正が行われています(注)。)

② その法人の国内設備投資額が、当期償却費総額の30%を超えること

③ 当期の所得金額が前期の所得金額以下であること

(所得金額は、欠損金の繰越控除前の金額)

 

(注) 令和4年度税制改正により、資本金の額または出資金の額が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上である場合および前事業年度の所得の金額がゼロを超える場合のいずれにも該当する場合には、次のように上記①の継続雇用者給与等支給額に係る要件が厳格化されています。

その法人の継続雇用者給与等支給額が、継続雇用者比較給与等支給額に対して1%以上(令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度については、0.5%以上)増加すること

 

■令和6年度税制改正後の取扱い

令和6年度税制改正により、下記の①から③のいずれも満たさない大法人は、一定の税額控除制度の適用が制限されるものとされました。改正後の規定は、令和6年4月1日から令和8年3月31日までの間に開始する各事業年度に適用されます。太字の箇所が、改正点になります。

 ① 継続雇用者給与等支給額に係る要件

・下記以外の法人:継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額を超えること

・前年度が黒字の大法人(資本金10億円以上かつ従業員数1,000人以上、または、従業員数2,000人超):継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額に対して1%以上増加すること

② 国内設備投資額に係る要件

・下記以外の法人:国内設備投資額が当期償却費総額の30%を超えること

前年度が黒字の大法人(資本金10億円以上かつ従業員数1,000人以上、または、従業員数2,000人超): 当期償却費総額の40%を超えること

③ 所得金額に係る要件

当期の所得金額が前期の所得金額以下であること

 

要件を満たさない場合に適用除外とされる税額控除制度

・試験研究費の税額控除制度(特別試験研究費の税額控除制度を含む)

・地域未来投資促進税制に係る税額控除制度

・認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の税額控除(5G導入促進税制)

・事業適応設備を取得した場合等の税額控除制度(デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制に係る税額控除制度およびカーボンニュートラルに向けた投資促進税制に係る税額控除制度)

 

 

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