第259回 新リース会計基準と税制改正の方向性

2024年7月1日

 

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新リース会計基準の審議状況

企業会計基準委員会から、令和5年5月2日付で企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」および企業会計基準適用指針公開草案第73号「リースに関する会計基準の適用指針(案)」が公表されました。現在、確定に向けての最終的な審議が行われており、年内の確定が見込まれています。

 

■税制改正の方向性

借手の会計処理についてIFRS第16号と同様の「使用権モデル」が適用されることにより、現行の法人税法の中途解約不能かつフルペイアウトの要件を満たすリース取引について「売買があったものとして所得の金額を算出する」とする規定(法法64条の2)の抜本的な見直しが必要になることが考えられます。

(1)会計上、使用権資産とリース負債が計上され、使用権資産を償却資産として認識することによる償却費とリース負債について認識される支払利息が費用に計上されることになりますが、税制についても取引の経済的実態に合った処理とすべきという点において企業会計の考え方と基本的に異なることはないと考えられる点、(2)使用権資産の償却費と支払利息がリース期間にわたって費用計上されますが、現行の会計基準とトータルの費用計上額に差異はないことから課税上の弊害は生じないと考えられる点で、改正後の会計基準に基づく会計処理を認容する取扱いとなる可能性が高いように思われます。

また、原則的な会計処理と例外的な会計処理で、トータルの費用計上額は同額となることから、法人税法上、原則的な会計処理または例外的な会計処理のいずれも認容される取扱いになる可能性が高いと思われます。

さらに、短期リースおよび少額リースについて、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法で費用として計上する方法についても、課税上の弊害はないことから認容されることとなる可能性は高いと思われます。その点は、会計基準等を適用しない中小企業の実務にも影響が生じないように配慮される必要性もあると考えられます。

 

■税制改正の課題

「収益認識に関する会計基準」の時と同様に、会計基準に合わせられる範囲で税制が対応してくることが予想されます。

ただし、会計基準案等が示している処理の中でも、見積りの要素が強い部分(例えば不動産賃貸借契約における借手のリース期間の見積り)について、法人税法がどのように対応するかが重要な論点となると考えられます。「収益認識に関する会計基準」における変動対価の取扱いのように、一定の条件の下で認めるものとされるかどうかが注目点になると考えられます。

なお、会計基準案が提案している通り、会計基準案が年内に確定し公表後最初に到来する年の4月1日以後開始する事業年度の期首から改正後の会計基準を早期適用するとされた場合には、早期適用時期に合わせて、令和7年度税制改正により一定の措置が行われることが予想されます。年内に確定するかどうかによって、税制改正の時期にも影響が生じると考えられます。

 

 

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