第263回 賃上げ促進税制における「繰越税額控除限度超過額」の創設
2024年11月1日
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■「繰越税額控除限度超過額」の創設
令和6年度税制改正では、中小企業者等向けの賃上げ促進税制についてのみ、同税制を適用しても控除しきれない金額の5年間の繰越しが認められる税額控除限度超過額の繰越制度が創設されました。中小企業は、未だ6割が欠損法人となっており、税制措置のインセンティブが必ずしも効かない構造となっているため、これまで本税制を活用できなかった赤字企業に対しても賃上げにチャレンジもらうための後押しのために設けられたものです。
令和6年4月1日以後に開始する事業年度に生じる繰越税額控除限度超過額について適用されます。
■繰越控除できる上限額
繰越税額控除限度超過額を繰越控除する事業年度において、①その事業年度において賃上げ促進税制の適用要件を満たしているときは、当期の所得に対する法人税額の20%相当額を限度に、当期の賃上げ促進税制の控除を優先して行い、当該控除額が当期の所得に対する法人税額の20%相当額の上限額に達しない範囲で繰越税額控除限度超過額の繰越控除を行います。また、②その事業年度において賃上げ促進税制の適用要件を満たしていないときは、当期の所得に対する法人税額の20%相当額を限度に繰越税額控除限度超過額の繰越控除を行います(措法42条の12の5第4項)。
■繰越税額控除限度超過額に係る適用要件
繰越税額控除限度超過額制度の適用要件は、大きく3つに分けられます。①繰越税額控除限度超過額を繰越控除する事業年度において、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を超えること、②中小企業者等向けの賃上げ促進税制の適用を受けた事業年度以後の各事業年度の確定申告書に「繰越税額控除限度超過額の明細書」の添付があること、③同繰越控除制度の適用を受けようとする事業年度の確定申告書に「控除の対象となる繰越税額控除限度超過額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類」の添付があること、です。②③の手続要件には注意が必要です。
■税額控除限度超過額の繰越控除制度を適用するときに必要な明細書
繰越税額控除限度超過額が発生した事業年度以後の各事業年度(繰越税額控除限度超過額を繰り越す事業年度)の確定申告書に添付する「繰越税額控除限度超過額の明細書」とは、「別表6(24)付表一 給与等支給額、比較教育訓練費の額及び翌期繰越税額控除限度超過額の計算に関する明細書」です。同明細書の「翌期繰越税額控除限度超過額の計算」の欄に翌期繰越額等を記載する必要があります。繰越期間が複数事業年度になる場合でも、継続して同明細書を添付の上、確定申告書の提出が必要となる点には注意が必要です。
前期から繰り越してきた繰越税額控除限度超過額を繰越控除する事業年度の確定申告書に添付する「控除の対象となる繰越税額控除限度超過額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類」は、「別表6(24) 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」および「別表6(24)付表一 給与等支給額、比較教育訓練費の額及び翌期繰越税額控除限度超過額の計算に関する明細書」です。
■繰り越す期間中に大企業・中堅企業になった場合
繰越税額控除限度超過額の生じた事業年度終了時に中小企業者等に該当していれば、その後、資本金や従業員数の増加に伴い大企業や中堅企業(特定法人)にステイタスが変更になった場合でも、過去に生じた繰越税額控除限度超過額の繰越控除が認められます。
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