第264回 国庫補助金等に係る圧縮記帳と固定資産の取得等の時期

2024年12月1日

 

このコラムの次回更新を知りたかったら…@zeiken_infoをフォロー

 

 

 

国庫補助金等の交付を受けてその目的資産を取得等したときの圧縮記帳制度

国または地方公共団体は、産業政策、設備投資の促進、設備の近代化などを推進する目的で、補助金や助成金を交付する制度を設けています。国または地方公共団体から補助金または助成金を受けた場合に、その国庫補助金等をもって交付の目的に適合した固定資産の取得を行い、またはその目的に適合した固定資産の改良をした場合に、圧縮記帳が認められます。圧縮記帳により損金算入できる圧縮限度額は、国庫補助金等の目的資産の取得または改良に充てた国庫補助金等相当額です(法法42条1項)。

国庫補助金等の交付年度と固定資産の取得等年度との関係により、次のようにパターン別の取扱いを押さえておく必要があります。

 

■国庫補助金等の交付年度に固定資産を取得等した場合

国庫補助金等の交付を受けた事業年度においてその国庫補助金等をもってその交付の目的に適合した固定資産の取得または改良をした場合、国庫補助金等の交付事業年度末までに国庫補助金等の返還不要が確定している場合に、その事業年度において圧縮記帳の適用が受けられます。

この場合の圧縮限度額は、固定資産の取得等に充てた国庫補助金等の額に相当する金額です。

 

■国庫補助金等の交付年度前に固定資産を取得等した場合(先行取得の場合)

国庫補助金等の交付を受けた事業年度前の事業年度においてその交付の目的に適合する固定資産の取得等をしている場合、その交付を受けた事業年度においてその固定資産について圧縮記帳を行うことが認められます(法法42条1項)。

その場合の圧縮限度額は、その固定資産が減価償却資産であるときは、固定資産の取得等した事業年度から減価償却が行われることから、その減価償却分を調整する観点から、次のように計算する必要がある点に留意する必要があります。

国庫補助金等の交付事業年度において圧縮記帳した場合は、その事業年度から取得価額を圧縮した分減価償却費が少額になります。取得等事業年度よりも後の事業年度(例えば翌期)において圧縮した場合は、それまでは取得価額が減額されていないため、減価償却費が多くなってしまいます。先の算定式は、その調整を図るためのものであり、この算定式により圧縮することにより、圧縮後の帳簿価額は、交付事業年度に圧縮した場合と同額になります。

 

■国庫補助金等の交付年度後に固定資産を取得等する場合

国庫補助金等の交付を受けた事業年度において固定資産の取得等が行われず、固定資産の取得等が何らかの事情によりその後の事業年度になってしまった場合には、交付を受けた事業年度において仮勘定で経理しておいて、目的資産を取得した事業年度において仮勘定を取り崩して益金の額に算入し、そこで圧縮記帳を適用することが認められます。仮勘定の取崩による益金と圧縮記帳の適用による損金が相殺関係になることで、課税が繰り延べられることになります。

なお、国庫補助金等の交付を受けた事業年度において仮勘定に経理しないで益金算入し、固定資産の取得等をした事業年度に圧縮記帳を行うことは認められないと考えられます。

 

■交付を受けた事業年度に固定資産の取得等をした場合であっても、返還不要が未確定の場合

国庫補助金等の交付を受けて、その交付の目的に適合した固定資産の取得等をした場合であっても、固定資産を取得等した事業年度の末日において国庫補助金等の返還不要が確定していない場合は、その事業年度における圧縮記帳の適用はできませんが、特別勘定の経理が認められます。

国庫補助金等相当額をいったん特別勘定として経理し、その経理した金額は、当該事業年度の損金の額に算入されます。その後の事業年度において返還不要が確定したときに特別勘定を取り崩して益金の額に算入し、そこで改めて圧縮記帳の適用を受けることになります(法法43条、44条)。

なお、この特別勘定の経理は、積立金として積み立てる方法のほか、仮受金等として経理する方法によることもできます(法基通10-1-1)。

 

 

このコラムの次回更新を知りたかったら…@zeiken_infoをフォロー

 

新着プレスリリース

プレスリリース一覧へ

注目タグ