第265回 新リース会計基準に係る税制の取扱い
2025年1月1日
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■新リース会計基準の公表
令和6年9月13日付で、企業会計基準委員会から企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(以下、「新リース会計基準」)および企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」が公表されました。
令和9年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度から強制適用されます。ただし、令和7年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度から早期適用することができるとされています。
■令和7年度税制改正による税制対応
新リース会計基準に対して、税制がどのように対応するのかが注目されます。早期適用に合わせて措置されますので、令和7年度税制改正により対応が行われます。
新リース会計基準に対して税制は基本的に対応されない、すなわち税会不一致となることが見込まれます。法人税法上、従来どおり中途解約不能かつフルペイアウトの要件を満たしたもの(いわゆるファイナンス・リース)をリースと定義し、オペレーティング・リースはそれと区別して資産の賃貸借として取り扱われることになると予想されます。
新リース会計基準におけるリース期間の設定については、現行のリース会計基準におけるリース期間と異なる期間になるケースが生じます。借手に延長オプションまたは解約オプションの権利があり、延長オプションの行使をすることが合理的に確実である場合および解約オプションの行使をしないことが合理的に確実である場合は、それらの対象期間を解約不能期間に加えるものとされています。リース期間の設定について、見積りの要素が入ることが想定されます。そのようにして見積もられたリース期間中のリース料総額を現在価値に割り引いた額をリース負債に計上することになりますが、その負債は法人税法における債務確定基準の考え方と相容れないものになる可能性があります。
■調整が必要となる場面と実務への影響
第1に、リース期間に延長オプションまたは解約オプションの対象期間が加えられた場合、リース期間が長くなることに伴い、会計上のリース料総額がより多くなることが考えられます。その場合の利息費用の計上について、申告調整が必要になることが懸念されます。
第2に、オペレーティング・リースについて、会計上使用権資産およびリース負債を計上した場合、法人税法上は現行の賃貸借処理が継続することになることが見込まれ、会計上の費用計上額と税務上の損金算入額が異なることとなる場合の申告調整の問題が懸念されます。
第3に、貸手の会計処理については、「収益認識に関する会計基準」において割賦基準が認められなくなったこととの整合性から、現行の企業会計基準適用指針第16号に定められている「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」の廃止が決定されました。これを受けて、法人税法においても、貸手の「リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度(延払基準に係るもの、法法63条)」は、経過措置を設けた上で廃止されることが予想されます。その場合は、消費税の取扱いもそれに合わせて分割納付は認められず、最初の課税期間において一括納付とされることとなることが見込まれます。
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