第269回 新リース会計基準と税務との関係

2025年5月1日

 

 

 

 

 

■リース取引に係る法人税法上の取扱い

リース取引に係る法人税法の規定は、次のとおりであり、今後も存置されます(法法64条の2第1項)。

法人がリース取引を行った場合には、そのリース取引の目的となる資産(以下、「リース資産」)の賃貸人から賃借人への引渡しの時に当該リース資産の売買があったものとして、賃貸人または賃借人である法人の各事業年度の所得の金額を計算する。

売買があったものとして取り扱うため、従来借手においてはリース資産が償却資産として取り扱われ、利息相当額を区分する会計処理を行った場合には利息費用と減価償却費が損金算入され、利子込み法の会計処理によった場合には減価償却費が損金算入されるものとされてきました。

一方、貸手においては、リース資産の引渡しの時に譲渡があったものとして取り扱われますが、収益および費用をリース期間にわたって繰り延べて計上する延払基準が例外的に認められていました。この延払基準は、令和7年度税制改正により、経過措置が設けられた上で廃止が決定されました。

 

■法人税法上のリース取引の定義

法人税法上、リース取引は、次のように定義されています(法法64条の2第3項)。

売買があったものとして処理する「リース取引」の定義は、資産の賃貸借(所有権が移転しない土地の賃貸借その他の政令で定めるものを除く)で次の①および②に掲げる要件に該当するものをいう。
① 当該賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものであることまたはこれに準ずるものであること(=中途解約不能)
② 当該賃貸借に係る賃借人が当該賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を享受することができ、かつ、当該資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること(=フルペイアウト)

上記の要件は、いわゆるファイナンス・リース取引に該当する要件(中途解約不能+フルペイアウト)と同様です。したがって、税務上、売買があったものとして取り扱われるのは、上記の2つの要件が満たされているリース取引(いわゆる一般のファイナンス・リース)であって、オペレーティング・リースについては、通常の資産の賃貸借と同様のものとして、賃貸借処理が適用されます。要するに、オペレーティング・リース取引は、レンタルと同様の賃貸借ととらえ、「リース取引」の定義から除外されており、賃貸借処理が当然に適用されるものとされています。

 

■法人税法上のオペレーティング・リースその他の資産の賃貸借に係る規定の新設

令和7年度税制改正により、資産の賃貸借で、先の2つの要件を満たすリース取引以外のものについて、次の規定が新設されました(法法53条1項)。いわゆる一般のオペレーティング・リースだけでなく、不動産の賃貸借契約等でリースの識別規定により新たにリースとして識別されるものについても、上記の2つの要件を満たすリース取引に当てはまらないものは、この規定の適用対象になります。

内国法人が資産の賃貸借で法人税法64条の2第3項(リース取引に係る所得の金額の計算)に規定するリース取引以外のもの(以下、「賃貸借取引」という)によりその賃貸借取引の目的となる資産の賃借を行った場合において、その賃貸借取引に係る契約をした事業年度以後の各事業年度においてその契約に基づき当該内国法人が支払うこととされている金額(その資産の賃借のために要する費用の額またはその資産を事業の用に供するために直接要する費用の額を含むものとし、次に掲げる額に該当するものを除く)があるときは、その支払うこととされている金額のうち当該各事業年度において債務の確定した部分の金額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
一 法人税法22条3項1号(各事業年度の所得の金額の計算の通則)に掲げる原価の額
二 固定資産の取得に要した金額とされるべき費用の額および繰延資産となる費用の額

「その支払うこととされている金額のうち当該各事業年度において債務の確定した部分の金額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。」と規定されているように、債務確定した部分の金額が当然に損金算入されるのであって、損金経理要件は課されていない点に留意が必要です。

したがって、新リース会計基準を適用して、オペレーティング・リースについて使用権資産およびリース負債を計上した場合、使用権資産の償却費およびリース負債に係る利息費用を別表4で加算し、賃借料のうち各事業年度において債務の確定した部分について「賃借料認容」として減算する調整も可能となります。

 

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