第274回 賃上げ促進税制における税額控除限度額の繰越控除に要注意 ~明細書上の管理の徹底が重要~

2025年10月1日
■賃上げ促進税制における税額控除限度額の繰越控除
令和6年度税制改正により、中小企業者等向けの賃上げ促進税制についてのみ、同税制を適用しても控除しきれない金額(税額控除限度超過額)の5年間の繰越しが認められる税額控除限度超過額の繰越制度が創設されました。要するに、当事業年度の税額控除限度額が当事業年度の所得に対する法人税額の20%相当額を超えて、控除しきれない金額は、5年間の繰越控除が可能となりました。令和6年4月1日以後に開始する事業年度に生じる繰越税額控除限度超過額について適用されます。
本制度の適用要件は、大きく3つあります。①繰越税額控除限度超過額を繰越控除をする事業年度において、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を超えること、②中小企業者等向けの賃上げ促進税制の適用を受けた事業年度以後の各事業年度(繰越税額控除限度超過額を繰り越す事業年度)の確定申告書に「繰越税額控除限度超過額の明細書」(別表6(24)付表1)の添付があること、③繰越税額控除限度超過額の繰越控除の適用を受けようとする事業年度の確定申告書に「控除の対象となる繰越税額控除限度超過額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類」(別表6(24)および別表6(24)付表1)の添付があること、です。②③の手続要件には特に注意が必要です。
■繰越控除できる上限額
繰越税額控除限度超過額を繰越控除する事業年度において、①その事業年度において賃上げ促進税制の適用要件を満たしているときは、当事業年度の所得に対する法人税額の20%相当額を限度に、当期の賃上げ促進税制の控除を優先して行い、当該控除額が当期の所得に対する法人税額の20%相当額の上限額に達しない範囲で繰越税額控除限度超過額の繰越控除を行います。
また、②その事業年度において賃上げ促進税制の適用要件を満たしていないときは、当事業年度の所得に対する法人税額の20%相当額を限度に繰越税額控除限度超過額の繰越控除を行います(措法42条の12の5第4項)。
■令和7年3月期決算に税額控除限度超過額が発生した場合の令和8年3月期の対応
令和7年3月期から繰り越された繰越税額控除限度超過額は、令和8年3月期の所得に対する法人税額の20%相当額から当事業年度の控除額(令和8年3月期について賃上げ促進税制の要件を満たしていない場合はゼロ)を控除した金額を限度に控除できます。
当事業年度の所得に対する法人税額の20%相当額から当事業年度の控除額(ない場合はゼロ)を控除した金額を別表6(24)の46欄に記載し、前事業年度から繰り越された繰越税額控除限度超過額を別表6(24)付表1の25欄の計から別表6(24)の47欄に転記した上で、46欄と47欄のうち少ない額が繰越控除できるため、それを別表6(24)の48欄に記載することになります。
最後に、当事業年度の控除額(ない場合はゼロ)と繰越税額控除限度超過額の繰越控除額の合計額が当事業年度の控除額として51欄に記載されます。














