「非課税とされる旅費の範囲」|税務通信 READER’S CLUB
2023年12月6日
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関連記事:No.3775(令和5年10月30日号) 04頁
従業員等に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行に「通常必要であると認められる部分の金額」が出張旅費等特例の対象とされ、その「通常必要であると認められる部分の金額」は所得税基本通達9-3《非課税とされる旅費の範囲》の例により判定するものとされています。
なぜ、所得税では「非課税とされる旅費の範囲」を定めているのでしょうか。
所得税は、原則として、個人の全ての所得(収入)に対して課税することとされています。例えば、給与所得者(サラリーマン)であれば、原則として、会社から受け取った全ての金銭や経済的利益(金銭ではなく物やサービスでの支給)が所得税の課税の対象になります。しかし、「全ての金銭」というと出張旅費や通勤手当なども含まれてしまい、仮に通勤手当に所得税が課税されてその一部が給与から天引きされると、通勤定期を購入するお金が足りなくなってしまいます。
そこで、所得税の法令では、給与所得者が受け取るもののうち次の3つについては実費弁償的な性格に基づくものであるため、非課税所得として、所得税がかからないようにしています。この「実費弁償」とは、職務を執行するにあたってかかった経費を償うために支給される金銭のことをいいます。
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上記の非課税所得の対象となるものの中で「通常必要である」「職務の性質上欠くことができない」というキーワードが気になるところです。これは、このように規定をしておかないと「旅費」や「通勤手当」、「制服」という名目で支給をすれば、何でも所得税がかからないことにできてしまうからです。非課税となるものは、あくまでも「実費弁償的な性格のもの」に限られる点に注意が必要です。
そのうえで、所得税基本通達9-3では、具体的に《非課税とされる旅費の範囲》を次のように定めています。
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ポイントは、後半の(1)適正なバランスが保たれている基準によって計算されているかどうか、(2)その支給額が同業他社の支給額と照らして相当かどうか(多額ではないか)を勘案して判定するという点です。
これらに当てはまらない旅費(「通常必要であると認められる部分の金額」を超えるもの)は、給与として課税されるため、消費税の仕入税額控除の適用がない点にも留意が必要です。