年間シートの損金算入時期|税務通信 READER’S CLUB
2024年7月9日
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記事では、プロ野球等の年間シートの購入費に関して、その利用目的により、福利厚生費や交際費として処理することが解説されています。このような目的の違いにより、損金算入時期も異なるのでしょうか?
専ら従業員の慰安のための年間シート購入なのであれば、福利厚生費として処理することになりますが、この福利厚生費は、契約しているシートの利用可能期間の経過とともに損金算入されるのが原則です。ただし、購入から1年以内に役務提供が完了するものであれば、継続適用を条件に、法人税基本通達2-2-14の短期前払費用特例の適用が可能です。その他にも、年間シートは通常、中途解約できないものであることから、利用開始日の属する事業年度での損金算入も認められる実務があるとも聞いています。
一方で、この年間シートの購入が取引先の接待目的なのであれば、交際費として処理することになりますが、この場合は、上記と損金算入時期が異なります。なぜなら、交際費の損金算入時期は、接待や供応等があったときに交際費の支出があったものと認識するためです。したがって、年間シートの購入費に関しても、実際に試合を観戦したときに交際費として処理をすることになり、上記の短期前払費用特例は利用できません。
実務では、従業員が利用することもあれば、取引先が利用することもあることが多いと思います。その場合には、どのように処理をすべきでしょうか?
利用実績を詳細に残しておくことを条件に、その利用実績に応じて、福利厚生費と交際費に分解して処理することが可能と考えます。つまり、従業員が利用した部分(回数)は福利厚生費、取引先が利用した部分(回数)は交際費として処理する、ということです。
ただし、この場合は、上記のようにシーズンの開幕日での損金算入は、物理的に不可能であるため、利用日ごとに処理をすることになるものと思われます。
福利厚生費として認められるためには、どのような書類を作成、保管しておくべきでしょうか?
専ら従業員の慰安のために利用されていることを証明するために、年間シートの利用履歴を残しておくことが必要です。また、従業員が公平に利用できるように、福利厚生に関する規則やルールも作成しておくといいでしょう。
また、交際費として処理するからといって、その利用状況が不明ということであれば、役員賞与などの認定もあり得ると思います。いずれにしても、利用履歴は残しておくべきだと思います。