決算賞与に係る社会保険料の損金算入時期|税務通信 READER’S CLUB
2025年7月9日
関連記事:No.3850(令和7年5月12日号) 42頁

この記事では決算賞与を損金算入するための要件や注意点が解説されていましたが、その決算賞与に係る社会保険料の税務上の取扱いも、決算賞与と同じように考えればいいのでしょうか?

決算賞与をその支給日より前のタイミングで損金算入するためには、<1>その支給額の通知、<2>通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1月以内の支払い、<3>通知をした日の属する事業年度における損金経理、が要件とされています。これは、上記の要件を満たすことで、支払うのは翌期であっても、当期末時点で債務として確定していると整理しているためです。
一方で、社会保険料の損金算入時期は、法人税基本通達9-3-2に定められており、その時期は「計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することができる」とされています。
9-3-2 法人が納付する次に掲げる保険料等の額のうち当該法人が負担すべき部分の金額は、当該保険料等の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。
(1) 健康保険法第155条《保険料》又は厚生年金保険法第81条《保険料》の規定により徴収される保険料 (2) 旧効力厚生年金保険法第138条《掛金》の規定により徴収される掛金(同条第5項《設立事業所の減少に係る掛金の一括徴収》又は第6項《解散時の掛金の一括徴収》の規定により徴収される掛金を除く。)又は同法第140条《徴収金》の規定により徴収される徴収金 (注) 同法第138条第5項又は第6項の規定により徴収される掛金については、納付義務の確定した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。 |
「できる」ということは、社会保険料の納付告知や実際の支払い時が、損金算入時期の原則だとわかります。つまり、この通達は、社会保険料等の損金算入時期の前倒しを許容している通達です。
では、決算賞与に係る社会保険料の「計算の対象となった月」がいつなのか、が重要になりますが、決算賞与に係る社会保険料については、その決算賞与の支払い日が属する月が計算の対象となった月となります。これは、通常の月額給与に係る社会保険料のように、何月分、という概念がないためと思われます。
したがって、決算賞与に係る社会保険料は、決算賞与の損金算入時期とは異なり、特例はなく、実際の決算賞与の支払い日において損金算入することになります。このように両者の損金算入時期は、泣き別れになるので、注意が必要です。