遺留分侵害により調停を行った相続に係る更正の請求期限
2022年6月7日
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遺留分侵害により調停を行った相続に係る更正の請求期限
[質問]
父が死亡、相続人は子が3人(A、B、C)です。
相続財産は遺言書により子Cがすべて取得することになっていましたが、BによりCに対し遺産に関する紛争調整調停の申し立てが行われました。
この申し立てと相続税の申告期限の前後関係は確認できていませんが、相続税申告は期限内に未分割で申告されています。(私は当初申告には関与していません。)
その後、AがCに対し遺留分侵害額の請求調停の申し立てを行っています。
この度、Aの遺留分侵害額の請求調停がR3年11月24日に成立、Bの遺産に関する紛争調整調停がR3年12月21日に成立しました。A、BともにCから遺留分侵害相当額の支払いを受けました。
これにより相続税の更正の請求を行いますが、小規模宅地等の特例を受ける居住用宅地があり、これは全てCが取得しています。
更正の請求期限は、遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したことを知った日から4月以内ですが、Aの更正の請求期限は3/24でしょうか。それとも4/21でしょうか。
(当初申告で、申告期限後3年以内の分割見込書が提出されている、と仮定)
[回答]
1. 相続税法32条1項は、「相続税について申告書を提出した者は、次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告に係る課税価格及び相続税額が過大となったときは、当該各号に規定する事由が生じたこと を知った日の翌日から4月以内に限り、更正の請求をすることができる。」とし、同項3号はその事由の一つとして「遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したこと」を挙げています。
2. 遺留分を有する者は、配偶者、子(代襲相続人も含む)、直系尊属(被相続人の父母、祖父母)であり、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年又は相続開始の時から10年を経過したときに時効によって消滅するとされています。
ご照会は、この「遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したこと」とは、遺留分権者が複数いる場合に侵害額として支払うべき金額の全体が確定したときなのか、あるいは、個々の侵害額が確定したときなのかというものと思いますが、遺留分侵害額の請求は遺留分権者ごとに行うこと、その請求期間は相続の開始及び遺留分を侵害する遺贈等があったことを知った時から1年以内と幅があることから、遺留分権者ごとに判定すべきと考えます。このため、本件の場合、Aの遺留分侵害額の確定は令和3年11月24日でその4月後は令和4年3月24日と、Bの遺留分侵害額の確定は令和3年12月21日でその4月後は令和4年4月21日というように、それぞれごとに判定するのが相当と考えます。
なお、BのCに対する遺産に関する紛争調整調停の内容が明らかではありませんので、同調停の成立を遺留分侵害額の確定としました。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
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