未分割財産を売却した場合の分割確定の時期

2022年6月24日

 

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未分割財産を売却した場合の分割確定の時期

[質問]

遺産について全部未分割のまま相続税期限内申告を行っています。

不動産について分割確定前に先に売約した場合、分割は確定していないので、相続税法32条(更正の請求の特則)の事由には該当せず、後日分割が確定した時から4ヶ月以内に小規模宅地等の特例の適用をして、更正の請求ができると考えていますがいかがでしょうか。

 

[回答]

未分割財産を共同相続人が売却した場合は、原則として、法定相続分の割合による共有持分に基づく譲渡があったこととなると解されており、判例は、共同相続人が全員の合意により遺産分割前に遺産を構成する特定不動産を第三者に売却したときは、法定相続分の割合による共有持分に基づく譲渡がなされたものであり、その不動産は遺産分割の対象から逸出し、売却代金は、これを一括して共同相続人の一人に保管させて遺産分割の対象に含める合意をするなどの特段の事情がない限り、相続財産には加えられず、共同相続人が各持分に応じて個々にこれを分割取得するとしています(最高裁昭和52年9月19日、昭和54年2月22日判決)。

このような考え方を受けてだと思いますが、相続登記を共有で行って未分割財産を共同相続人が売却した場合は、法定相続分でそれぞれ相続することを同意したと判断されてしまうため、後に分割協議を行って法定相続分と異なる割合で売却代金を分割することは原則的には認められない、との見解が見られます。

 

一方、国税庁HPに掲載されている質疑応答事例では、譲渡所得の質疑ではありますが、換価分割について、次のように説明されています。

『 遺産分割の一形態である換価分割には、換価時に換価代金の取得割合が確定しているものと、確定しておらず後日分割されるものとがあります。

1 換価時に換価代金の取得割合が確定している場合

この場合には、①換価代金を後日遺産分割の対象に含める合意をするなど特別の事情がないため相続人が各法定相続分に応じて換価代金を取得することとなる場合と、②あらかじめ換価時までに換価代金の取得割合を定めている(分割済)場合とがあります。 ~以下省略~

2 換価時に換価代金の取得割合が確定しておらず、後日分割される場合

遺産分割審判における換価分割の場合や換価代金を遺産分割の対象に含める合意をするなど特別の事情がある場合に、換価後に換価代金を分割したとしても、 ~①省略~ ②相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属し、その共有状態にある遺産を共同相続人が換価した事実が無くなるものではないこと、③遺産分割の対象は換価した遺産ではなく、換価により得た代金であることから、譲渡所得は換価時における換価遺産の所有割合(=法定相続分)により申告することになります。

ただし、所得税の確定申告期限までに換価代金が分割され、共同相続人の全員が換価代金の取得割合に基づき譲渡所得の申告をした場合には、その申告は、認められます。 ~以下省略~              』

 

ご質問の事例は、不動産について分割確定前に先に売却した場合とあるだけで、詳細は不明ですが、換価分割が行われたと見るのが一般的だと思います。

そうすると、上記のとおり、換価代金を遺産分割の対象に含める合意をするなど特別の事情がないと、換価時に換価代金の取得割合が確定している場合に該当し、不動産の売却時には分割協議(換価分割)が成立しているということになるわけですから、この点に留意が必要だと思いますし、売却時の状況がどうなっていたのかを確認しておく必要があります。

 

他方、ご質問の事例の売却時の状況が、共同相続人間で売却代金の取得割合をどうするか決めずに、取り敢えず売却したというようなことであれば、これは逆に、換価代金を遺産分割の対象に含める合意が行われていると見ることができると思います。そして、上記の質疑応答事例でも換価代金を「分割」したと説明しているわけですから、売却代金の分配を決めたときを「分割」(換価分割)が確定したときとみて差し支えないと考えます。

 

(税理士懇話会・資産税研究会事例より)

 

 

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