相続税の非上場株式等の納税猶予等の適用を受けている株式等を贈与した場合の納税猶予期限の確定
2024年2月21日
このコラムの次回更新を知りたかったら…@zeiken_infoをフォロー
相続税の非上場株式等の納税猶予等の適用を受けている株式等を贈与した場合の納税猶予期限の確定
[質問]
1 事実の概要
①A社の代表取締役甲は平成29年に先代経営者の相続の際にA社株式510株を相続し、当時の株式納税猶予の特例(一般措置)を受けました。
<当時の特例適用の概要>
・A社発行済株式総数1,000株
株主 被相続人(甲の父)510株→甲が全株を相続
甲が従来から所有 210株
甲の親族 220株
A社従業員 60株
・特例対象株式:発行済株式総数の2/3の667株-従来所有210=457株
②このたび、5年間の継続届出が無事終わりました。甲も高齢になってきたため甲の息子乙に代表取締役を譲り、経営の一線から退こうと考えています。その際に甲が所有するA社株の一部を贈与したいと考えています。
2 問題
甲が所有するA社株のうち、納税猶予の対象となっていない従来から甲が所有する210株と相続分510株のうち特例対象となっていない53株の合計263株については乙に贈与しても納税猶予の取消しとならないと考えてよいでしょうか。
[回答]
1 納税猶予期限の確定事由と納付確定額
非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例には、租税特別措置法第70条の7の6から第70条の7の8までの各規定による措置(「相続税の特例措置」といいます。)と同法第70条の7の2から第70条の7の4までの各規定による措置(「相続税の一般措置」といいます。)の2つの制度があります。
そして、経営承継期間経過後の相続税の一般措置の納税猶予期限の確定事由と納付確定額は、次のとおりとされています(租税特別措置法第70条の7の2第5項)。
(1) 経営承継相続人等が、相続税の一般措置の適用を受けた非上場株式等(以下「特例対象非上場株式等」といいます。)の一部を譲渡又は贈与した場合 ⇒ 対応部分を納付
(2) 経営承継相続人等が、特例対象非上場株式等の全部を譲渡又は贈与した場合 ⇒ 全部を納付
(3) 認定承継会社が会社分割をした場合(吸収分轄承継会社等の株式等を配当財源とする剰余金配当があった場合に限ります。)若しくは認定承継会社が組織変更した場合(認定承継会社等の株式等以外の財産の交付があった場合に限ります。) ⇒ 対応部分を納付
(4) 認定承継会社が解散をした場合(合併により消滅する場合を除きます。)又会社法等の規定により解散をしたとみなされた場合 ⇒ 全部を納付
(5) 認定承継会社が資産保有型会社に該当することとなった場合 ⇒ 全部を納付
(6) 認定承継会社の事業年度における総収入金額(営業外収益及び特別利益を除きます。)が0(零)となった場合 ⇒ 全部を納付
(7) 認定承継会社が資本金の額を減少した場合又は準備金の額を減少した場合 ⇒ 全部を納付
(8) 経営承継相続人等がこの制度の適用をやめる旨の取りやめ届出書を提出した場合 ⇒ 全部を納付
(9) 認定承継会社が合併により消滅した場合(適格合併をした場合を除きます。) ⇒ 対応部分を納付
(10) 認定承継会社が株式交換、株式移転により他の会社の株式交換完全子会社等となった場合(適格交換等をした場合を除きます。) ⇒ 対応部分を納付
2 照会事例における確定事由の該当性
経営承継相続人が、認定承継会社の株式等の一部を又は全部を譲渡又は贈与した場合において、この譲渡又は贈与した株式等の中に、相続税の一般措置の適用を受けた株式等とそれ以外の株式等の両方がある場合、どちらの株式を譲渡又は贈与したとみるかという問題があります。
ご照会の事例では、甲(贈与者)が租税特別措置法70条の7の2第16項項の規定の適用に係る贈与をした場合(乙(受贈者)が非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例(特例措置でも一般措置でも可)を受ける場合)には、特例対象非上場株式等から先に贈与したものとみなされ、それ以外の譲渡又は贈与の場合には、特定対象非上場株式等以外のものから先に譲渡又は贈与したものとみなされます(租税特別措置法施行令第40条の8の2第70項)。
したがって、甲が保有する認定承継会社の株式720株のうち、特例対象非上場株式等の457株を除いた263株を乙に贈与するということですので、甲の相続税の一般措置の納税猶予期限は確定することなく、引き続き相続税の一般措置の適用を受けることができると考えます。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
このコラムの次回更新を知りたかったら…@zeiken_infoをフォロー