総則6項適用の考え方

2024年3月19日

 

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総則6項適用の考え方


[質問]

郊外に多数の土地を所有する会社(以下「甲社」という)の株式を贈与する目的で甲社の株式評価を行っています。

甲社は、総資産額の80%以上が土地の価額であり、その土地の半分以上を設立時に現物出資により取得し、残りは売買により取得しています(いずれも30年以上前に取得)。

今回、株式評価をするにあたり、土地の評価を行っているのですが、財産評価基本通達に基づく評価額が約1億円となり、帳簿価額約10億円と比較して1/10程度の評価額となりました。念のため、不動産鑑定士に評価を依頼したところ約5億円の評価額となりました。

財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定評価額では約5倍の乖離があります。

この場合に、総則6項の適用リスクはあるのでしょうか。

 

 

 

[回答]

1 令和4年4月19日最高裁判決は、評価通達総則6項の適用に関して、次のアンダーライン部分のように、相続税評価額と鑑定評価額とに乖離があったとしても、それだけでは総則6項の適用はないと判示しています。

「 相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するものではないと解するのが相当である。

イ これを本件各不動産についてみると、本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間には大きなかい離があるということができるものの、このことをもって上記事情があるということはできない。

(以下 略)                            」

 

2 本件は、帳簿価額10億円、鑑定評価額5億円、相続税評価額1億円とのことで、これが一つの土地を指すのか、あるいは土地全体を指すのか明らかではありませんが、いずれにしても、取得時の価額よりもかなり下落しており、相続税評価額と鑑定評価額に大きな乖離が生じているようです(なお、相続税評価額と鑑定評価額に乖離があるかどうかは各土地ごとに判定することになります。)。

ただ、このような大きな乖離が生じる事情は分かりませんが、取得時期から課税時期まで相当の期間が経過しているようですので、上記最高裁判決事案のように、「評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合」には当たらない、すなわち、総則6項のご心配はいらない、とみるのが一般的と考えます。

 

 

(税理士懇話会・資産税研究会事例より)

 

 

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