譲渡所得の概算取得費等の計算方法

2024年5月13日

 

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譲渡所得の概算取得費等の計算方法


[質問]

譲渡所得の取得費についてご教示ください。

相続で取得したアパート(土地建物)の売却を考えていますが、購入時の資料が残っていません。ただし、途中でリフォームのために修繕をしており、所得税確定申告時に減価償却の計算をしています。

現在、建物はリフォーム後にかなりの時間が経過しており、ほとんど価値はないと考えています。そうすると、売却価額を500万円とした場合、この500万円を土地の価額と考え、建物のリフォーム代の残存簿価を30万円としたときに、取得費はどのように計算することが適切でしょうか。考えられるパターンを挙げてみましたので、ご意見いただければ幸いです。

① 500万円×5%=25万円

②(土地)500万円×5%+(リフォーム)30万円=55万円

③(土地)500万円×5%<(リフォーム)30万円→大きい方30万円

 

 

 

[回答]

譲渡所得の金額は、譲渡した資産の収入金額から、その資産の取得費と譲渡に要した費用の合計額を控除して計算します。

この場合の「取得費」については、①その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。②資産が家屋その他使用又は期間の経過により減価する資産である場合には、①の合計額に相当する金額から、その取得の日から譲渡の日までの期間の不動産所得等の金額の計算上必要経費に算入される償却費の額の累積額(又は減価の額)などを控除した金額とするとされています(所得税法第38条)。

そして、この「取得費」については、「長期譲渡所得の概算取得費控除」として、昭和27年12月31日以前から所有していた土地や建物を譲渡した場合は、譲渡価額の5%を取得費として譲渡所得を計算するほか、昭和28年1月1日以後に取得した土地や建物についてもこの方法(譲渡価額の5%)に準じて計算しても差し支えないとされています(租税特別措置法第31条の4、租税特別措置法通達34の1-1)。

次に、「譲渡に要した費用」とは、資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記若しくは登録に要する費用、その他譲渡のために直接要した費用のほか、借家人等の立退料、土地等の上にある建物等の取り壊し費用、既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で他に譲渡するため当該契約を解除したことに伴い支出する違約金、その他当該資産の譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用とされています(所得税法基本通達33-7)。

ご照会の事例では、アパート(土地・建物)の不動産売買契約において、①建物と土地の二つ不動産の売買を目的とするものであるか、②土地という不動産のみの売買を目的とするものであるかにより、次のとおり譲渡所得の取得費の計算が異なることになります。

まずは、上記②の土地という不動産のみの売買を目的とするものとした場合には、建物は買主に贈与されたものと考えられますので、売却価額500万円は土地の譲渡価額となり、その取得費は500万円×5%=25万円になると考えられます。

これに対して、上記①の建物と土地の二つの不動産の売買を目的とするものとした場合には、売買契約は双務有償契約であることから、建物の売買価額を0円とすることはできないため、何らかの価額が付されることになり、それが建物の譲渡価額になると考えられます。したがって、当該売買契約における建物の譲渡価額から控除する取得費は、建物の残存簿価30万円になり、同売買契約における土地の譲渡価額から控除する取得費は、その譲渡価額の5%になると考えられます。この場合、建物の譲渡所得金額の計算上譲渡損失の金額が生じたときには、その損失の金額を土地の譲渡所得金額から控除することができます(租税特別措置法第31、32条)。

なお、不動産売買契約等において土地と建物の譲渡価額が明らかでない場合、ご照会の事例では、課税実務上次のとおり譲渡価額と取得費を計算します。

・建物の譲渡価額:300千円(建物は譲渡益も譲渡損もないものと考えます。)
・建物の取得費:300千円(残存簿価)
・土地の譲渡価額:5,000千円-300千円(建物の譲渡価額)=4,700千円
・土地の取得費:470万円×5%=235千円

 

 

(税理士懇話会・資産税研究会事例より)

 

 

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