国外転出時課税で非居住者に相続される有価証券の価額
2024年6月17日
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国外転出時課税で非居住者に相続される有価証券の価額
[質問]
既に亡くなっている方の準確定申告についての質問です。
被相続人が有価証券を時価ベースで約3億円所有していて、相続人の一人が非居住者に該当します。
この場合に、国外転出時課税で非居住者に相続される有価証券について、相続発生時点で有価証券のみなし譲渡(含み益に対して課税)になるかと思います。
ですので、準確定申告で有価証券部分については含み益に対してみなし譲渡の申告が必要になります。
今回相続発生日が2023年9月16日(土曜)で、その際の時価(最終価格)がない状態です。相続税評価上であれば最終価格がある日付のうちもっとも近い日ベースで評価しますが、みなし譲渡の譲渡益を計上する際の時価も同じ考え方でよいでしょうか。
また複数の証券取引所に上場されている時価の考え方についてですが、相続税評価上は最も低い最終価格を評価上取れますが、所得税法上の譲渡益の計算も同じように最終価格が低い証券取引所の数字で時価を取れますか。
[回答]
1 国外転出時課税制度の概要
国外転出(国内に住所および居所を有しないこととなることをいいます。)をする時点で、1億円以上の有価証券等、未決済信用取引等または未決済デリバティブ取引(以下「対象資産」といいます。)を所有等(所有または契約の締結をいいます。)している場合には、一定の居住者に対して、国外転出の時に、対象資産の譲渡または決済(以下「譲渡等」といいます。)があったものとみなして、対象資産の含み益に対して所得税が課税されます(「国外転出時課税」)。
また、上記の一定の居住者が国外転出をしていなくても、贈与、相続または遺贈により非居住者に対象資産が移転した場合にも、その時に対象資産を譲渡等したものとみなして、対象資産の含み益に対して所得税が課税されます(「国外転出(贈与・相続)時課税」)。これらを総称して「国外転出時課税制度」といいます(所得税法60条の2、60条の3)。
2 国外転出(贈与・相続)時における有価証券等の価額
国外転出の時における有価証券等の価額は、所得税基本通達60の2-7により「法第60条の2第1項第1号の国外転出の時における当該有価証券等の価額又は同項第2号の国外転出の予定日から起算して3月前の日における当該有価証券等の価額については、原則として、23~35共-9及び59-6(公社債及び公社債投資信託にあっては、昭和39年4月25日付直資56ほか1課共同「財産評価基本通達」の第8章第2節《公社債》)の取扱いに準じて算定した価額による。」とされています。
この取扱いは、所得税法第60条の3《贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例》の適用に当たっても準用するとされています(所基通60の3-5)。
3 照会事例における最終価格
ご照会の事例では、国外転出時課税の対象となる有価証券が上場株式ということですので、国外転出(相続)時における有価証券等の価額は、所得税基本通達23~35共-9《所得税法施行令第84条第3項本文の株式の価額》の取扱いに準じて算定した価額によることから、その価額は、国外転出(相続)時の公表された最終価格により計算することになります。
この場合、相続開始日が土曜日で最終価格がないときには、相続開始日前の同日に最も近い日における最終の価格になります。また、2以上の金融商品取引所に同一の区分に属する最終の価格がある場合には、当該価格が最も高い金融商品取引所の価格により計算することになります(所得税基本通達23~35共-9(1)括弧書き)。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
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