遺留分侵害請求後の申告義務の可否
2024年9月24日
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遺留分侵害請求後の申告義務の可否
[質問]
(前提情報)
・被相続人A
・財産のすべてを相続した相続人B
・被相続人Aの死亡を7年後に知った相続人C
相続人Bと相続人Cは兄弟であるが、異母兄弟であり、一切連絡は取っていなかった。
X0 年 被相続人A死亡
X1 年 財産を全て相続人Bに譲る旨の遺言書に基づき、財産のすべてを相続した相続人Bが相続税申告手続きを適正に済ませた。
X7 年 相続人Cが被相続人Aの死亡を知った
(ご質問)
遺留分侵害請求後の申告義務の可否について、お伺いします。
上記状況にて、相続人Cが遺留分侵害請求を行い、X8年に調停が成立しました(遺留分相当額を相続人Cに支払う和解内容)。
この時、調停成立から4か月以内に相続税法における更正の請求をした場合、相続人C は期限後申告義務が生ずるという認識に相違ないでしょうか。根拠としては、相法35条3項に更正の請求があった日から1年を経過した日であれば、決定処分ができる記載があります。また、この場合相続人Cの申告期限はいつとなるのでしょうか。税務署側から案内が来るものを思料しておりますが、何か基準があれば、ご教示ください。
[回答]
1 遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定した場合には、その事由が生じたことを知った日の翌日から4月以内に更正の請求をすることができるとされています(相法32①四)。一方、相続税法30条は、相続税の申告書の提出期限後において相続税法32条1号から6号(遺留分の侵害額の請求は3号)までに掲げる事由が生じたため相続税の申告書を提出すべき要件に該当することとなった者は、期限後申告書を提出することができるとしています。
これは、相続開始時から相当期間が経過しているケースがあること、更正の請求をするかどうかは任意であることから、相続税法27条のように申告書の提出義務を課したものではないと考えます。
このため、その申告期限についての定めは設けられておらず、その期限後申告書の提出により納付すべき相続税の徴収を目的とする徴収権の時効(5年)の起算日をその期限後申告書の提出があった日とするなどの特則が設けられています(相法50①)。
2 一方、相続税法35条3項は、税務署長の権限として、相続税法32条1号から6号までの規定による更正の請求に基づき更正をした場合において、その更正の請求をした者以外の他の者が新たに相続税を納付すべきこととなるときは、更正又は決定をするとされています。ただし、この税務署長の権限は更正の請求があった日から1年を経過した日以後は行使できないこととされています。
3 ご照会の「調停成立から4か月以内に相続税法における更正の請求をした場合、相続人Cは期限後申告義務が生ずるという認識に相違ない」かという点については、上記1の通りCに対して申告義務が課されているわけではありませんが、Bの更正の請求に基づき更正があった場合には、税務署長に対して更正又は決定をする権限が生じますので、実質的にはCに対して申告義務が生じるのと同様の結果となると考えます。
なお、税務署側からの案内があるかどうかは、税務署に確認された方がいいと思います。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
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