贈与物件の取得価額について
2024年12月16日
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贈与物件の取得価額について
[質問]
親が所有していた貸地を第一種市街地再開発事業により権利交換で30階建高層マンションの27階の1室を取得します。取得後直ぐに、子へ贈与する予定です。子は受贈後、賃貸物件にする計画です。
提供した土地の交換価格が交換する1室の価格より不足しているので約1,600万円を追加で支払いをして取得します。交換する1 室の価格は約8,000万円です。
この場合の贈与物件の適正価格(評価額)は交換後の約8,000万円となるのでしょうか。それとも、交換後の取得価額は交換前の取得価額を引き継ぐとして交換前の土地の取得価額+約1,600万円となるのでしょうか。
一般的に考えられるのは相続税評価額(ルール改正後)による評価だと思いますが、固定資産税評価額はすぐに出ないので贈与税のシミュレーション計算が困難です。何か他に方法はありますか。
[回答]
ご照会のように建物の固定資産税評価額が付されていない場合の当該建物の相続税評価額の算定については、同様な状態での増改築等の場合の相続税評価額の算定方法が財産評価基準書(令和4年分東京都の例)の「家屋の固定資産税評価額に乗ずる倍率」欄の注書きにおいて次のとおり明示されています。
「課税時期において、増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の価額については、財産評価基本通達5(評価方法の定めのない財産の評価)の定めに基づき評価します。 具体的には、当該家屋の価額は、増改築等に係る部分以外の部分に対応する固定資産税評価額に、当該増改築等に係る部分の価額として、当該増改築等に係る家屋と状況の類似した付近の家屋の固定資産税評価額を基として、その付近の家屋との構造、経過年数、用途等の差を考慮して評定した価額(ただし、状況の類似した付近の家屋がない場合には、その増改築等に係る部分の再建築価額から償却費相当額を控除した価額の100分の70に相当する金額)を加算した価額(課税時期から申告期限までの間に、その家屋の課税時期の状況に応じた固定資産税評価額が付された場合には、その固定資産税評価額)に基づき財産評価基本通達89(家屋の評価)又は93(貸家の評価)の定めにより評価します。(以下略)」
なお、将来完成した建物の給付を受けることができる権利の価額について東京高裁平成15年3月25日判決は、「第一種再開発事業に伴い、将来、施設建築物が完成したならば、その一部等の給付を受けることができるという権利は、目的物が貸付金債権等のように元本が確定しているものと異なり施設建築物であることから、評価通達91に定められている建築中の家屋の評価との均衡を図る観点から、斟酌割合を30%とすることが合理的であるとして算出した課税庁の主張金額を相当とする」旨の判断が示されています(千葉地裁平成17年1月25日判決同趣旨)。
ご照会のケースについても上記の増改築等の場合の家屋の評価方法に準じて評価するのが合理的と考えますが、ご照会の文面では、親が取得するマンションの一室の価額が8,000万円となっていますが、その価額は、建物及び敷地権の価額の合計額ではないでしょうか。
そうであれば、建物部分と当該建物部分に係る敷地権とに分けて相続税評価額を算定する必要がありますから、まず、8,000万円のうち建物部分の価額がいくらなのかを組合等に確認していただき、その価額に70%を乗じたものが建物部分の相続税評価額となり、次に、当該建物部分に係る敷地権の相続税評価額は、路線価等を基に評価基本通達の定めに従って評価するのが相当と考えます。
(税理士懇話会・資産税研究会事例より)
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