親会社株式の評価における2年前に買収した子会社株式の評価

2025年5月26日

 

 

 

 

親会社株式の評価における2年前に買収した子会社株式の評価


[質問]

弊社は2年前にM&A により約8千万円でA社株式を100%取得しました。

取得時のA社の時価純資産価額は約4千万円です。

現在のA社の時価純資産価額は約4千万円強です。

弊社の株式の相続税評価額を算定するにあたり、A社株式の評価額については、M&Aによる取得価額は売買実例価額とは言えないため、財産評価基本通達に基づいて評価して差支えないでしょうか。

 

[回答]

1 親会社株式の評価における子会社株式の評価方法

評価会社が取引相場のない株式を所有している場合、その相続税評価額は、いずれの株式も財産評価基本通達178《取引相場のない株式の評価上の区分》以降に定めるところにより評価することになります。

そして、この所有株式の純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)を算定するときには、各資産の価額(相続税評価額)から各負債の金額を控除して計算(評価差益に対する法人税額等相当額を控除しない)するとされています(評基通186-3《評価会社が有する株式等の純資産価額の計算》)。

2 子会社株式の評価

ご照会の事例は、弊社(親会社)の株式を純資産価額方式により評価するに当たり、弊社が保有するA社(子会社)の株式の純資産価額を算定する場合、その株式に売買実例価額があるときは、その価額によるべきかというご質問と思われます。

取引相場のない株式の評価をする場合、1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の計算に当たって、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び借地権などの土地の上に存する権利並びに家屋及びその付属設備又は構築物の価額は、路線価等の相続税評価額によって評価するのではなく、これらの各資産の課税時期における「通常の取引価額」に相当する金額によって評価します。この場合、その土地等又は家屋等の帳簿価額が課税時期における「通常の取引価額」に相当すると認められるときは、その土地等又は家屋等の帳簿価額によって評価することができることになっています(評基通185《純資産価額》かっこ書)。

ご照会の事例では、弊社が所有する資産はA社の株式(取引相場のない株式)ですので、この通達の「通常の取引価額」に相当する金額で評価するという取扱いは適用されないことから、A社の株式の相続税評価額は財産評価基本通達に基づいて評価するものと考えます。

なお、A社株式については、2年前の買収時の取得価額が判明していることから、財産評価基本通達6《この通達の定めにより難い場合の評価》が適用されることを危惧されているのではないかと思われますが、この規定は、財産評価基本通達に定める評価方法を画一的に適用した場合には、適正な時価が求められず、その評価額が不適切なものとなり、著しく課税の公平を欠く場合も生じることから、個々の財産の態様に応じた適正な時価評価が行えるように定められているものであり、いわゆる租税回避行為の否認規定ではないと説明されています。

ご照会の事例では、弊社がA社の株式を2年前に事業買収という形で取得していますので、買収後の課税時期(2年後)におけるこの株式の時価評価として、買収価額によらず財産評価基本通達によって評価することが「著しく不適当と認められる」とはいえないと思います。

 

 

(税理士懇話会・資産税研究会事例より)

 

 

 

 

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