被相続人が入院していた場合の小規模宅地等の特例の適用

2025年11月27日

 

 

 

 

被相続人が入院していた場合の小規模宅地等の特例の適用


[質問]

亡くなった方(A)名義の不動産(土地、建物 1件)があります。この不動産はAが生前自宅として使っていました。

Aは、R7.4月に亡くなりました。

Aは、R6.9月頃からずっと入院していてそのまま病院で亡くなりました。

Aの自宅は、いつ戻ってきてもいいように私物はそのままです。

この自宅は、どなたかに貸すなど別の使い方もしていません。

今回この自宅をAと同居していたAの娘(B)が相続することになりました。

Bは、ずっとこの自宅に住み続け、売却もしない予定です。

この場合、Bが相続することで小規模宅地等の特例は使えますか。

 

[回答]

1 小規模宅地等の特例の被相続人要件等

租税特別措置法第69条の4《小規模宅地等についての相続税の課税価額の計算の特例》(以下「小規模宅地等の特例」という)の対象となる宅地等は、個人が相続又は遺贈により取得した財産のうち、被相続人が所有していた宅地等で、相続開始の直前に被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族の事業又は居住の用に供されていたもので、建物又は構築物の敷地の用に供されているものになります。

 

2 特定居住用宅地等の取得者要件等

被相続人が所有していた宅地等を相続又は遺贈により取得した者について、取得した宅地等が特定居住用宅地等に該当するためには、その取得者に応じて次の要件を満たす必要があります(措置法69条の4条第3項第2号)。

⑴ 取得者が配偶者の場合は、特に要件はありません。

⑵ 取得者が被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族の場合は、相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること。

 

⑶ 取得者が⑴及び⑵以外の親族の場合は、①居住制限納税義務者等のうち日本国籍を有しない者ではないこと、②被相続人に配偶者がいないこと、③相続開始の直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた相続人がいないこと、④相続開始3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族などが所有する家屋に居住したことがないこと、⑤相続開始時に取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと、⑥その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること。

 

3 照会事例における特定居住用宅地等の該当性

小規模宅地等の特例の被相続人の居住の用に供されていた宅地等に当たるかどうかは、被相続人がその宅地等の上にある建物に生活の拠点を置いていたかどうかにより判断することになります。

ところで、病院に入院した場合は、その入院期間中は病院で起居することになりますので、入院によりその者の生活の拠点が病院に移ったとも考えられますが、病院は病気を治療するための施設ですので、入院患者は病気が治癒すれば入院前に居住していた建物に戻るのが通常であると考えられます。

そうであれば、ご照会の被相続人Aが所有していた自宅(土地・建物)は、相続開始の直前においてAの居住の用に供されていたものではありませんが、病院の機能等を踏まえれば、Aがそれまで居住していた建物で起居しないのは、一時的なものと認められますから、その建物が入院後他の用途に供されたような特段の事情のない限り、被相続人の生活の拠点はなおその建物に置かれていると解するのが実情に合致するものと考えられます。

したがって、その建物の敷地は、空家となっていた期間の長短を問わず、相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当します(国税庁HP/法令等/質疑応答事例/「入院により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例」参照)。そして、その建物の敷地は、その建物にAと同居していたBが取得するということですので、上記2⑵の取得者要件等である居住継続と所有継続の要件を満たすことにより、特定居住用宅地等に該当することになります。

なお、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当しない場合でも、BがAと生計を一にする親族に該当する場合は、生計を一にしていた親族の居住の用に供されていた宅地等として、特定居住用宅地等に該当することになると思います。

 

(税理士懇話会・資産税研究会事例より)

 

 

 

 

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