【健康保険 傷病手当金、労災保険 休業補償給付】
~新型コロナで会社を休んだ時の給付~
働く人が知っていると得をする社会保険の知識 第1回

2023年1月25日

 

ZEIKEN PRESSコラムの更新情報を知りたかったら…@zeiken_infoをフォロー

 

○●——————————

このコラムでは働く皆さんが知っていると得をする社会保険、労働保険、あるいは周辺の労働法関係のテーマを取り扱い、「イザ」というときにみなさんに使っていただくことを狙いとしています。したがって、「読んで終わり」ではなく「思い出して使う」または「周囲の人へのアドバイス」に役立てていただければ幸いです。

今回は記念すべき第1回として、【健康保険 傷病手当金、労災保険 休業補償給付】~新型コロナで会社を休んだ時の給付というテーマでお届けします。

——————————●○

 

【健康保険 傷病手当金、労災保険 休業補償給付】
~新型コロナで会社を休んだ時の給付~

終わらない新型コロナ

新型コロナが流行しはじめて早くも3年が経過しました。一時は全国的に緊急事態宣言が出され外出も控える状況でしたが、最近では経済活動を止めずに感染拡大を抑える形に変化しつつあります。従業員が新型コロナに罹患してしまったときは、その方は休んで療養してもらい、濃厚接触者に該当する場合には自宅待機等の措置が取られています。

令和5年1月末現在、厚生労働省通知により、新型コロナ陽性者の療養期間について有症状の方は発症日翌日から最短7日、無症状の方は検体採取日の翌日から最短5日となっていますので、この間は自宅療養(重症化は医療機関)となっているはずです。

 

有給も残り少ない

流行し始めたときには新型コロナでお休みする際、従業員各人の年次有給休暇を使う例が多くみられました。年次有給休暇を使用する場合は通常働いた時と同じ額の給与が支給され、会社側も面倒な手続きは不要で年次有給休暇の取得率もUPしますので特に問題とはなりませんでした。

しかし、3年の長期に渡っていることで、従業員自身のコロナ罹患によるお休みはもちろんのこと、家族が罹患して濃厚接触者となるケースも増え、「もう年次有給休暇の残りも少ない」という方もかなり出てくるようなりました。こんな時に助かるのは「傷病手当金」または「休業補償給付」という制度です。

 

傷病手当金の特徴と手続き

傷病手当金は健康保険法に基づく制度で、会社員など健康保険に加入している被保険者が業務外(業務とは無関係)の事由により、ケガや病気になり労務不能の状態になったときに支給される制度です。

ただし、この制度は条件があり、まず、①「待期期間が連続して3日あること」が必要です。この3日の中に会社のお休み等、公休日があった場合でも3日にカウントされ、4日目以降から手当金の支給対象になります。

 

<待期3日間の考え>

〇無理をして途中働いたような場合

 

 

〇通常のお休みをしたパターン

 

次に、②対象となった日については原則として給与が出ていない(手当金より少ない場合は差額)ことが必要です。傷病手当金は働けない間の「生活費の支援」という位置付けだからです。

そして最後に、③労務不能であること、が必要であり、医師による労務不能であることの証明が必要です。新型コロナが蔓延していた時期には、病院での診療が難しいケースも多かったため、病院で受診できなかった場合には、罹患した従業員本人が医師の代わりに期間や症状等を傷病手当金の医師の証明欄に記入することや「療養状況申立書」の提出などでも、支給対象とされていましたが、現在ではそのような取扱いは認められていません。

 

<提出の手続き>

どこに …協会けんぽ、または、健康保険組合

提出書類…傷病手当金支給申請書、(休んだ日がわかる)出勤簿コピー、(給与が減額されたことが分かる)給与明細、賃金台帳等のコピー、(組合は「療養状況申立書」が必要な場合もあり)

 

労災保険 休業補償給付の特徴と手続き

新型コロナによる欠勤に対する給付は傷病手当金が一般的ですが、労災保険(労働者災害補償保険)による給付を使う場合もあります。これは新型コロナに罹患した原因が「明らかに業務に起因している」と判断できるような場合に使用します。

 

〇感染経路が不明の場合でも、感染リスクが高い業務※に従事し、それにより感染した蓋然性が強い場合

(例1)複数の感染者が確認された労働環境下での業務

(例2)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下の業務

〇医師・看護師や介護の業務に従事される方々については、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として対象

出典 厚生労働省リーフレット

労災保険は休んだ際の給付額が特別支給分と合わせ約80%(傷病手当金は過去1年平均の約67%)ですので、傷病手当金よりも若干多い額となっています。また、健康保険の被保険者ではないパートタイマー等でも対象になります。

 

<提出の手続き>

どこに …会社管轄の労働基準監督署

提出書類…休業補償給付支給申請書、(様式8号)(休んだ日がわかる)出勤簿コピー、(給与が減額されたことが分かる)給与明細、過去3か月間の給与及び過去2年間の賞与額記載の賃金台帳等のコピー、等

ただし、感染経路が不明であることなどにより、労災の請求書を会社が作ってくれない、または、会社証明欄に記入してもらえない、等の場合もありえますので、そのようなときは会社管轄の労働基準監督署に相談してみることをお勧めします。

 

まとめ

ワクチン接種等の効果で重症化はしにくくなっているという声も聞かれますが、罹患した場合には自宅療養が原則ということに変わりはありません。新型コロナで4日間以上お休みして給与が出なかったときは、今回紹介した制度利用を考えてみましょう。

*取扱いの変更があったため一部内容を修正しました(2023年5月30日追記)。

 

ZEIKEN PRESSコラムの更新情報を知りたかったら…@zeiken_infoをフォロー

 

特定社会保険労務士小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。当コラムは2015年1月より担当。

» ホームページ 社会保険労務士法人ソリューション

講師画像

新着プレスリリース

プレスリリース一覧へ

注目タグ