【マイナ保険証への切替えと健康保険証の廃止】
働く人が知っていると得をする社会保険の知識 第17回

2024年5月23日

 

ZEIKEN PRESSコラムの更新情報を知りたかったら…@zeiken_infoをフォロー

 

○●——————————

このコラムでは働く皆さんが知っていると得をする社会保険、労働保険、あるいは周辺の労働法関係のテーマを取り扱い、「イザ」というときにみなさんに使っていただくことを狙いとしています。したがって、「読んで終わり」ではなく「思い出して使う」または「周囲の人へのアドバイス」に役立てていただければ幸いです。

今回は、いろいろと物議を醸しているものの、令和6年12月に実施される「マイナンバーカード保険証(以下、「マイナ保険証」)」への切替えと「健康保険証の廃止」について取り上げたいと思います。

——————————●○

 

【マイナ保険証への切替えと健康保険証の廃止】

マイナ保険証とは

マイナンバーカードとは、マイナンバー(個人番号)が記載された顔写真付きのカードのことですが、このマイナンバーカードに健康保険証としての機能を持たせたものをマイナ保険証といいます。このマイナ保険証は令和3年から本格的な運用が開始され、令和5年4月には原則としてすべての医療機関でオンライン資格確認制度を導入、マイナ保険証の対応ができるように義務化されました(ただし義務化されたものの、導入がされていない医療機関もあり、その場合は従来の健康保険証を使う必要があります)。

 

マイナ保険証のメリット

マイナ保険証にはこれまでの健康保険証にはないメリットがあります。

(1)限度額の認定証提示が不要

これまでは入院や手術などで自己の負担する額が高額となった場合、協会けんぽや健康保険組合等で「限度額適用認定証」を発行してもらい、医療機関の窓口に提出することで高額療養費制度における限度額を超える支払が免除される仕組みでした(提示しなければさらに面倒な高額療養費の申請が必要)。これがマイナ保険証であれば上記の認定証を提出しなくても免除されます。

(2)薬など医療情報が確認できる

新しい医療機関などで受診した際、服用中の薬などを聞かれると思いますが、似たような名前が多く忘れてしまうこともありますよね。これがマイナ保険証を利用することで、マイナポータルという機能から、過去5年間に処方された薬の情報や受診した医療機関での診療情報が確認することができます(本人の同意が必要)。これにより今後の医療方針や薬の飲み合わせなどに役立てることが可能です。

(3)確定申告の医療費控除が楽になる

確定申告で医療費控除を受ける場合、該当の年1年分の領収書や医療費通知書を保管しておき、その上で医療費の計算を経て申告書に記載する必要がありますが、この作業が不要になります。

(4)健康保険証発行のタイムラグがなくなる

会社員だった人が転職した際、新しい会社の手続きで健康保険証が発行され手元に届くまで1~2週間のタイムラグがあったことと思います。これがマイナ保険証であれば転職してもカード切替の手続きはありませんので、そのまま使い続けることが可能です(会社から行政への届出自体は必要)。

 

ちなみにデメリットとしては、マイナ保険証(マイナンバーカード)を紛失した場合、再発行までに時間がかかることと、失くした本人が手続する必要があるということが挙げられます。これまでのように会社に健康保険証を失くしたと申告すれば、すぐに再交付されるということにはなりません。

 

マイナ保険証に切り替えるには

上記のようにマイナ保険証は多くのメリットがありますが、下記手続きが必要です。

(1)マイナンバーカードの発行

マイナ保険証の機能はマイナンバーに付加されますので、当然にマイナンバーカードの発行の申請が必要です。市区町村窓口に本人が出向き、手続したうえで2週間から1ヶ月程度、発行までに時間がかかります。

(2)利用登録の手続き

カードリーダーが備え付けられている医療機関や薬局での受付、または「マイナポータル」、または「セブン銀行ATM」からマイナ保険証の登録が必要です。

 

健康保険証の廃止と有効期限

現在の健康保険証は令和6年12月2日から新規での発行がされなくなり、廃止となります。ただし、発行済みの健康保険証に関しては最大1年間(それより前に有効期間が来た場合はその期間まで)有効とされています。したがって、今年の12月になれば一斉に全員分が切り替わるという仕組みではありません。

 

資格確認書とは

上記のように健康保険証は廃止となるわけですが、中にはマイナ保険証が利用できない人も出てきます。それは、マイナンバーカード自体を持っていない(希望しない)人やマイナ保険証の利用登録をしていない・しない、といった人です。

これらの人には当面の間、本人の申請なしで保険者から「資格確認書」が交付され、これを医療機関に提出することでマイナ保険証の代わりとなります(有効期間5年。なお、発行済みの健康保険証が有効期間内のうちは交付されない予定)。

 

どうなる?会社の手続き

マイナ保険証の利用により、会社での健康保険証の発行と返却という作業がなくなることになりますが、事務センターや健康保険組合等への本人の被保険者資格取得届や喪失届、被扶養者の異動届、等の手続きはこれまで通り必要です。

ただし、新たに取得する際の本人や被扶養者の手続きに関しては、実際に「マイナ保険証の有無」を確認し、資格確認書が必要な場合は新たに届出書に追加予定の「交付希望欄」等に記載されることで交付となる見込みです。また、退職時は会社が回収しての返納が予定されています。

 

まとめ

マイナ保険証への切替えと健康保険証の廃止が今年(令和6年)の12月と目前に迫っていますが、本文にあるように一斉切替えではないようです。また、取得や喪失、扶養の異動届、等の手続きの際に「資格確認書」の有無に配慮が必要となりそうですので、会社担当者の方は、今後の情報に注意しておきましょう。

 

 

ZEIKEN PRESSコラムの更新情報を知りたかったら…@zeiken_infoをフォロー

 

特定社会保険労務士小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。

» ホームページ 社会保険労務士法人ソリューション

講師画像

新着プレスリリース

プレスリリース一覧へ

注目タグ