【令和6年11月フリーランス法が施行!】
働く人が知っていると得をする社会保険の知識 第18回

2024年6月24日

 

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このコラムでは働く皆さんが知っていると得をする社会保険、労働保険、あるいは周辺の労働法関係のテーマを取り扱い、「イザ」というときにみなさんに使っていただくことを狙いとしています。したがって、「読んで終わり」ではなく「思い出して使う」または「周囲の人へのアドバイス」に役立てていただければ幸いです。

さて、定額減税などの陰に隠れていますが、フリーランスに関する法律「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下、「フリーランス法」)」の施行(令和6年11月1日)が、目前に迫ってきています!そこで今回は、働く人も、業務を依頼する企業も知っておくべきフリーランス法について取り上げたいと思います。

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【令和6年11月フリーランス法が施行!】

そもそもフリーランスとは

今や働き方は多様化の傾向にあり、その一つに「フリーランス」と呼ばれるものがあります。フリーランスとは企業や団体等に所属せず、個人で仕事を請け負う形態を指しており、企業等からの依頼案件に対し必要な技術や成果物を提供し、対価として報酬を得るというものです。注意すべきはこの時の契約は「業務委託契約」となり「雇用契約」ではありませんので、労働基準法等の適用は受けず、最低賃金法の対象にもならないということです。

 

フリーランス法ができた背景

上記のようにフリーランスは通常の労働者のように労働基準法等に守られていませんので、業務の依頼主である企業よりも一般的に弱い立場にあります。内閣官房等による調査(令和4年度フリーランス実態調査結果)を見ても、報酬の支払いが遅れた・期日に支払われなかったが約4割、報酬を減額された・著しく低い金額とされたが合計約3割、そもそも書面交付が不十分・示されていないが約4割、などフリーランスが不利益を被っている実態が浮かび上がっています。

 

法律の目的と適用となる対象

上記のような不公平な実態を是正するため、今回のフリーランス法は、フリーランスの方が安心して働ける環境を整備するため、以下を目的としています。

<目的>
 ① フリーランスと発注する企業との取引の適正化
 ② フリーランスの就業環境の整備

そしてこの法律が適用される対象は、発注する企業からフリーランスへの業務委託(事業者間取引)となっています。

発注する企業の定義 フリーランスに業務を委託する事業者で、従業員を使用するもの
フリーランス 業務を受託する事業者で、従業員を使用しないもの

<フリーランスのカメラマンの例>

この法律の対象(〇) 企業 【依頼:自社製品の撮影】→ フリーランス
  〃  対象外(×) 一般消費者【依頼:家族写真撮影】→ フリーランス

 

ここが重要!法律の具体的な内容

(1)書面等による取引条件の明示

業務委託する事業者*はフリーランスに「業務内容や報酬の額」「支払期日」等を「書面での交付」または「電子メール等の電磁的方法」によって明示しなければなりません。

*…フリーランスに業務委託するフリーランスも含まれます

(2)期日における支払い義務

発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り早い日に支払期日を設定して、期日内に支払うことが必要です。

(3)禁止行為

1か月以上の業務委託(契約更新した際の該当含む)の場合、下記の行為は禁止です。

①受領拒否 ②報酬の減額 ③返品 ④買いたたき(通常の対価と比較して著しく低い報酬額)⑤購入・利用強制(業務委託事業者が自己の指定する物の購入や役務提供を強制)⑥不当な経済上の利益の提供要請 ⑦不当な給付内容の変更・やり直し
*(①②③⑦前提として)フリーランスの責めに帰すべき事由がない場合

(4)募集情報の的確表示義務

業務委託する事業者がフリーランスを募集する情報の掲載時、下記に注意。

・虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならない
・正確かつ最新の内容に保たなければならない

(5)育児介護等と業務の両立に対する配慮義務

フリーランスの育児介護等に関し、業務委託する事業主側の配慮

6か月以上の業務委託 (申出に応じ)育児介護等と業務の両立ができるよう配慮しなければならない【義務】
6か月未満の業務委託 (申出に応じ)育児介護等と業務の両立ができるよう配慮に努めること【努力】

(6)ハラスメント対策に係る体制整備義務

フリーランスに対するハラスメント禁止の「方針の明確化」「相談窓口整備」「発生時の事後の迅速かつ適切な対応」

(7)中途解除等の事前予告・理由開示

6か月以上の業務委託における中途解約や更新しない場合には少なくとも30日以上前の予告、理由開示請求時における理由開示の義務。

 

まとめ(注意点)

フリーランスは「従業員を使用しない者」と定義されていますが、「週20時間未満の者、30日以下の雇用」のみの雇用の場合はフリーランスに該当します(フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A問2回答)。フリーランスとして働く方は法律の所管省庁(公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省)に法違反に関する申出ができ、所管省庁は必要な調査、指導・助言・勧告を行い、勧告に従わない場合には命令、公表を行うこととされています(命令違反には50万以下の罰金)

なお、契約名称が「業務委託」であっても、働き方の実態として労働者であるとされた場合は、この法律は適用されず、労働基準法等の労働関係法令が適用されることになりますので注意が必要です。

働き方が多様化する時代、業務を委託する会社、フリーランスの方、双方が法律を正しく理解しておくことがますます重要になってくるでしょう。

 

 

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特定社会保険労務士小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。

» ホームページ 社会保険労務士法人ソリューション

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