【緊急!社保適用拡大と最低賃金対応!】
働く人が知っていると得をする社会保険の知識 第21回

2024年9月20日

 

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このコラムでは働く皆さんが知っていると得をする社会保険、労働保険、あるいは周辺の労働法関係のテーマを取り扱い、「イザ」というときにみなさんに使っていただくことを狙いとしています。したがって、「読んで終わり」ではなく「思い出して使う」または「周囲の人へのアドバイス」に役立てていただければ幸いです。

さて、まだ暑さの残る日本列島ですが、企業の担当者はのんびりと秋まで待てない状況となりました。それは、社会保険の適用拡大と史上最大と言われる最低賃金引上げの対応をしなければならないからです!企業経営者や事務担当の方は、今すぐお読みいただき、自社の状況確認と対応に活かしていただきたいと思います。

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【緊急!社保適用拡大と最低賃金対応!】

社保拡大の対象者の要件

今回、社会保険の拡大の対象となるのは、従業員数が51人以上の「特定適用事業所」に雇用される従業員であって、以下の条件に全て当てはまった場合です。

(1)週の所定労働時間が20時間以上30時間未満(正社員の所定労働時間が40時間の企業の場合)

(2)所定内賃金が月額8.8万円以上(所定内賃金は基本給や諸手当の合計で、残業代や賞与は含まず)

(3)2ヶ月を超える雇用の見込がある(雇入れ時に2ケ月未満のでも、超過が常態化した時点で対象)

(4)学生ではない(夜間学生や休学中の者は対象者に含む)

*上記のように週20時間を超えていればすべて加入対象になるわけではありません。

 

9月上旬に通知が来ていれば確定です!

そして、会社担当者が気になっていたのが、「うちの会社は果たして特定事業所になるのか?」という点だったと思いますが、この9月上旬に10月1日から対象となる企業には「特定適用事業所該当事前のお知らせ」の通知が一斉に発送されました!この通知が来ている場合、10月1日から適用拡大事業所となることが確定です!貴社がそうであれば今から急いで対応の準備をしなければなりません。

 

急がなければならない理由

上記の「特定適用事業所該当事前のお知らせ」*には、「特定事業所に関するご案内」という用紙が同封されています。そしてそこには、このお知らせが到着した場合は10月1日時点で特定適用事業所に該当したものとして取り扱う】、【加入対象となる短時間労働者がいる場合は「被保険者資格取得届」を準備いただき、令和6年10月7日までに提出すること】と記載がされているのです。つまり、通知到着から1ヶ月の猶予もなく、事前準備の上、提出までしなければならないわけです。

*「事前のお知らせ」と「特定適用事業所に関する重要なお知らせ」は異なります。前者は確定ですが後者はあくまで可能性。

 

対応の手順

対応の手順としては、(1)従業員の中で今回の拡大の対象となる人をピックアップ、(2)その方々に加入時の条件(社会保険料負担や健康保険の切替)、それに被扶養者の要件、等を説明し、新たに社会保険の被保険者となることの同意と加入時に必要な情報(被扶養者含む)を収集、(3)(2)の結果を受けて「被保険者資格取得届」「被扶養者異動届」を作成、(4)10月1日以降に年金事務所(事務センター等)に提出という流れになります。

 

注意点

今回の適用拡大は法改正によるものですので、「本人の希望の有無」で決めることはできません。また、被扶養者となりそうな家族がいる場合には、その要件も説明して被扶養者の選定を進める必要があります。また、自社以外ですでに社会保険の被保険者となっている者は、自社で「被保険者資格取得届」を提出する他、どちらの会社の健康保険証を発行・使用するかの「二以上事業所勤務届」を管轄年金事務所(事務センター)または健康保険組合に本人または会社が提出しなければなりません。「もう一方の会社で加入しているからうちでは加入しなくてもよい」という誤った判断をしてしまう場合があることに要注意です。

繰り返しになりますが、特定適用事業所で社会保険適用拡大の要件を満たした従業員については、令和6年10月7日までに「被保険者資格取得届」と「被扶養者異動届」を提出する必要があります

 

最低賃金対応

最低賃金額は、まず、厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会が改定額の目安について答申(2024年度は全国平均で50円引き上げ、1054円で決定)、この結果を受けて地方最低賃金審議会が都道府県労働局長に答申、最終的に都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定します。令和6年度の地域別最低賃金額は下表の通りです(編注:令和6年10月1日に情報を更新しました)

注意点

改定後の金額に適用となる日(発効日)は都道府県毎によって異なりますが、この発効日から最低賃金額以上の額を使用者は支払わなければなりません(違反の場合は50万円以下の罰金)。給与締日とは異なることに注意。また、最低賃金額は時給額のため、月給者は時給額に直して比較する必要があります。

<計算式>⇒月給額÷月平均所定労働時間=時間単価≧最低賃金額(時間額)

*上記の月給額には「家族手当」「通勤手当」「皆勤手当」「残業手当」「臨時の手当」等は含みません

 

まとめ

今回は本当に目前に迫った「社会保険の適用拡大」と「最低賃金」の対応注意点について緊急で取り上げました。企業経営者や事務担当の方は是非参考にして準備してください。

 

 

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特定社会保険労務士小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。

» ホームページ 社会保険労務士法人ソリューション

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