【最低賃金、今年はどうなる?】
| 働く人が知っていると得をする社会保険の知識 第33回

2025年9月24日

最低賃金、今年はどうなる?

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このコラムでは働く皆さんが知っていると得をする社会保険、労働保険、あるいは周辺の労働法関係のテーマを取り扱い、「イザ」というときにみなさんに使っていただくことを狙いとしています。したがって、「読んで終わり」ではなく「思い出して使う」または「周囲の人へのアドバイス」に役立てていただければ幸いです。

秋は最低賃金が変更となる時期です。ここ数年上昇が続いていますが、物価高騰の影響を受けて今年はさらなる上昇がみこまれています。今回は今年の(地域別)最低賃金の動きについて取り上げます

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前提「最低賃金は2種類ある」

まず、前提条件として最低賃金は2種類あることをご存知でしょうか。最低賃金は各都道府県で定める「地域別最低賃金」と特定の産業だけが該当する「特定最低賃金」の2つが存在します。後者の「特定最低賃金」は、当該産業の労使が「地域別最低賃金」よりも高い水準で最低賃金を定めることが必要と認めた場合に設定されるもので、具体的には鉄鋼業や精密機械、繊維業などが該当します。

今回は地域別最低賃金をとりあげますので、以降は(最低賃金=地域別最低賃金)としてご理解ください。

 

 

最低賃金を決める仕組み

最低賃金は①【中央最低賃金審議会】が全都道府県をABCの3ランクに分けて改定額の目安について答申し、この結果を受け②【地方最低賃金審議会】が都道府県労働局長に答申。最終的に③【都道府県労働局長】が決定する仕組みです。

ランク 都道府県 金額
A 埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 63円
B 北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡 63円
C 青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 64円

今年は上記のように①の「中央最低賃金審議会」でAランク、Bランク、は各63円、Cランクは64円という答申が出されました。

 

 

最低賃金額と発効日(見込み)抜粋

上記「中央最低賃金審議会」の結果を受け、「地方最低賃金審議会」が都道府県労働局長に答申した内容の一部を下記に紹介します。

都道府県名 最低賃金額 昨年 UP額 引き上げ率 発効日
北海道 1,075円 1,010円 65円 6.4% 10月4
岩手県 1,031円 952円 79円 8.3% 12月1日
秋田県 1,031円 951円 80円 8.4% 8年3月31日
茨城県 1,074円 1,005円 69円 6.9% 10月12日
埼玉県 1,141 1,078 63 5.8 11月1
東京都 1,226 1,163 63 5.4 10月3
石川県 1,054 984 70 7.1 10月8
大阪府 1,177円 1,114円 63円 5.7% 10月16日
広島県 1,085円 1,020円 65円 6.4% 11月1日
愛媛県 1,033円 956円 77円 8.1% 12月1日
長崎県 1,031円 953円 78円 8.2% 12月1日
沖縄県 1,023円 952円 71円 7.5% 12月1日

*厚生労働省ホームページ 「平成7年地域別最低賃金額の全国一覧」より抜粋

今後上記の結果を踏まえ、都道府県労働局長が決定します(東京都、埼玉県等太字は決定済)。その後、決定の公示が行われ、発効となります。

 

 

注目すべき今年の特徴

注目すべき点は2点あります。1点目は中央の答申結果よりも地方の答申が大幅にUPしている例が見受けられるという点です。64円だったものが78円や80円になっている例が見受けられ、中小企業経営者にとってはかなり厳しい結果となっています。もう1点は発効日です。例年10月1日を基本としている都道府県が多いですが、今年は秋田県のように来年(8年)3月31日と答申している県もあり、ご自分の都道府県が上記の答申通りに確定するかどうかの確認も重要です。

(全国加重平均額過去10年の推移)

平成28 平成29 平成30 令和元 令和2 令和3 令和4 令和5 令和6 令和7
823 848 874 901 902 930 961 1,004 1,055 1,121

*上記のように過去10年間で最低賃金の全国加重平均額は298円と約300円も上昇しています。

 

 

会社における注意点

会社における注意点は主に2点です。1点目は月給者のチェックです。最低賃金額は上記のように時給額で決定しますので月給者の方は時給単価に換算した上で基準を超えているか判断しなければなりません。

例)東京都で対象となる月給額が200,000円、1か月の所定労働時間が月168時間の場合

計算式 200,000円÷168時間=1190.47≒1,190 *東京都の最低賃金は1,226円なので、時間当たり36円も下回っている

是正例)36円×168時間=6,048円 *現在の月給額に6,048円以上増額する必要がある

(最低賃金の対象とはならない賃金)

最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金のみで時間外割増賃金、休日割増賃金、深夜割増賃金が含まれない他、通勤手当や臨時に支払われる賃金、賞与、通勤手当、家族手当、精皆勤手当も最低賃金の対象とはなりません

そして、2点目は最低賃金が適用となる発効日は賃金締日とは異なるという点です。給与ソフトが1日単位で適用額を変更できない場合は、発効日前の賃金締日で先に変更しておくか、または手修正が必要になります。なお、最低賃金法違反は50万以下の罰金となりますので確定額の確認と必要な対応を心掛けてください

 

 

 

ま と め

今回は今年の最低賃金の動向について取り上げました。驚異的ともいえるUP額ですので、最低賃金の確定額と発効日をおさえつつ、最低賃金法違反とならないように注意してください。

 

 

 

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特定社会保険労務士小野 純

一部上場企業勤務後、2003年社会保険労務士小野事務所開業。2017年法人化。企業顧問として「就業規則」「労働・社会保険手続」「各種労務相談」「管理者研修」等の業務に従事。上記実務の他、全国の商工会議所、法人会、各企業の労務管理研修等の講演活動を展開中。
主な著作:「従業員100人以下の事業者のためのマイナンバー対応(共著)」(税務研究会刊)、「社会保険マニュアルQ&A」(税研情報センター刊)、「判例にみる労務トラブル解決のための方法・文例(共著)」(中央経済社刊)、月刊誌「税務QA」(税務研究会)にて定期連載中。

» ホームページ 社会保険労務士法人ソリューション

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