NFT を取引した場合の課税関係について[あいわ税理士法人 コラム]
2022/08/10
NFT を取引した場合の課税関係について[あいわ税理士法人 コラム]
1.はじめに
近年、整備されつつあるNFT(Non-Fungible Token)市場をご存じでしょうか。約75 億円でデジタルアート作品が取引されたことを耳にされた方も多いのではないでしょうか。
今回はNFT を用いた取引の課税関係について整理していきます。
2.NFT(非代替性トークン)とは
NFT の代表例でもあるデジタルアート作品は、これまで容易かつ無料でコピーがされており希少性が担保されていませんでした。しかし、データ破壊や改ざんが極めて難しいブロックチェーン技術の普及により所有証明が可能となった唯一無二のもの、それがNFT と呼ばれています。
3.所得税の課税関係について
国税庁タックスアンサーNo.1525-2 において以下の課税関係が公表されております。
いわゆるNFT が暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できるものである場合、そのNFT を用いた取引については所得税の課税対象となります。
※財産的価値を有する資産と交換できないNFT を用いた取引については、所得税の課税の対象となりません。
◆役務提供などにより、NFT を取得した場合
⑴役務提供の対価としてNFT を取得した場合は、事業所得、給与所得又は雑所得に区分されます。
⑵臨時・偶発的にNFT を取得した場合は、一時所得に区分されます。
⑶上記以外の場合は、雑所得に区分されます。
安定した生活を成立させるための継続取引であれば事業所得。上記に該当しないのであれば雑所得。勤務先から取得するのであれば給与所得の取り扱いとなります。
また、NFT はETH(イーサリアム)等により購入するものであることから、ETH 等の取得時の価額と比べNFT 購入時のETH 等の価額が上昇している場合にはその差益については、雑所得の取り扱いとなります。
◆NFT を譲渡した場合
譲渡したNFT が、譲渡所得の起因となる資産に該当し値上がり益がある場合には譲渡所得となります。
(注)NFT の譲渡が営利を目的として継続的に行われている場合は、譲渡所得ではなく、雑所得または事業所得に区分されます。
譲渡したNFT が譲渡所得の起因となる資産に該当しない場合は、雑所得(規模等によっては事業所得)に区分されます。
◆所得税のまとめ
取得した際は事業所得、給与所得、一時所得又は雑所得へ。
譲渡した際は譲渡所得、事業所得又は雑所得へ
つまり、個々の取引の実態及び個々の状況に応じてそれぞれ区分されます。
4.消費税の課税関係について(法人が取得)
続きまして、国税庁でまだ指針が公表されていない「法人がNFT を取得した場合の消費税の課税関係」について個人的見解を述べます。
◆NFT の取引が課税の対象となる取引か否か以下の4 要件を満たす場合、課税の対象となります。
⑴ 国内において行われるものであること。
⑵ 事業者が事業として行うものであること。
⑶ 対価を得て行われるものであること。
⑷ 資産の譲渡等であること。
(2)~(4)については、法人取引の場合充足すると考えられるため、主に(1)の国内取引判定及び非課税取引の該当の可否について検討をします。
◆国内取引の判定
消費税の判定においてカギを握る国内取引の判定は、原則として譲渡が行われる時におけるその資産の所在場所が国内にあるか否かによります。
しかし、NFT については資産の所在場所が明らかではないことも想定されます。その場合は、譲渡を行う者の事務所等の所在地で判定することになると考えられます。
上記を前提とした場合、法人が非居住者から購入する場合は、事務所等の所在地が国外にあることから国内取引に該当せず、消費税法の課税の対象となる取引には該当しません。
それに対し、法人が居住者から購入する場合は、事務所等の所在地が国内にあることから国内取引に該当するものであると考えられます。
◆非課税取引の該当可否
消費税法は、社会政策的見地等により限定列挙する形で一定の取引について非課税取引と規定しております。
例えば、暗号資産については限定列挙されているうちの“支払手段その他これらに類するもの”に該当するため非課税取引とされております。
それに対し、NFT は上記支払手段の譲渡に該当せず、その他の非課税取引として限定列挙されている取引にもあたらないため、非課税取引には該当しません。
◆消費税の取り扱いまとめ
上記を踏まえますと、非居住者からNFT を購入した場合は、国内取引に該当しないため、仕入税額控除をとることができません。
それに対し、居住者からNFT を購入した場合は、上記4 要件を満たし、かつ、非課税取引に該当しないため仕入税額控除をとることができると考えます。
5.おわりに
当該コラムを最後までお読みになった読者の方々はNFT に既に興味を持っている方が多いことでしょう。
実際に取引経験がある方又は取引の検討をされている方は早期に税理士等の意見を取り入れることを推奨いたします。
なお、消費税や法人税の取り扱いについては、まだ国税庁の見解が公表されておりませんので、今後も国税庁の動向に注目する必要があります。
執筆者:小林 直紘
【あいわ税理士法人グループの概要】
◆グループ構成
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◆関与先概要
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