資本金による税務の取扱いの相違点
[アクタス税理士法人 News Letter2025.11]

資本金による税務の取扱いの相違点[News Letter

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資本金の額は、会社の規模を示すだけのものではなく、法人税や消費税、地方税などにおいて、優遇措置の適用可否や納税義務の判定を決定する重要な基準となっております。今回は、資本金の額によって税務上の取り扱いがどのように変わるのか、主要な制度を網羅的に整理しましたのでご紹介します。

 

■法人税に関する取扱い

資本金の額等(資本金の額又は出資金の額)が 1 億円以下の法人は、税務上「中小法人等」や「中小企業者等」として扱われ、税制上の優遇措置の適用があります。ただし、以下の法人は対象から除かれます。

(※1)大規模法人とは、資本金又は出資金の額が 1 億円を超える法人、大法人による完全支配関係がある
法人、100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を保有されている法人をいいます。

 

(1) 軽減税率の適用有無

法人税の税率について、資本金の額等1 億円を超えるか否かによって軽減税率の適用の有無の違いがあります。なお、15%の軽減税率は、所得金額が年 10 億円を超える事業年度については 17%となり、前 3 事業年度の平均所得金額が 15 億円超の法人(適用除外事業者)に該当する場合は 19%となります。

(2) 交際費等の年 800 万円の定額控除限度額の適用有無等

交際費等の損金算入限度額について、資本金の額等 1 億円以下の中小法人等の場合、年 800 万円まで損金算入できます。中小法人等に該当しない場合は、以下の通りとなります。

(3) 欠損金の繰越控除と繰戻還付の適用可否

青色欠損金等については、資本金の額等 1 億円以下の中小法人等については、過去に発生した欠損金(税務上の赤字)を当期の所得(税務上の黒字)と相殺(繰越控除)することや当期に発生した欠損金を直前事業年度の所得のいずれか少ない金額まで相殺(繰戻還付)することができますが、資本金の額等 1 億円超の場合、原則その適用が以下の通り制限されます。

(4) 少額減価償却資産(30 万円未満)の即時償却

資本金の額等 1 億円以下の中小企業者等(常時使用する従業員の数が 500 人以下の法人(青色申告)に限ります。)は、購入した 30 万円未満の減価償却資産を会計上費用処理することにより、年 300 万円まで即時償却をすることが可能です。しかし、資本金の額等 1 億円超の法人や適用除外事業者は対象外となります。

(5) 特定同族会社の留保金課税の不適用

留保金課税は、一定の同族会社に該当する法人が利益を法人内にため込みすぎた場合に追加で課税される法人税です。資本金の額等 1 億円以下の中小法人等に該当する場合は、その適用が除外されています。

(6) 貸倒引当金の損金算入

資本金の額等 1 億円以下の中小法人等は、一定額を限度として貸倒引当金勘定に繰り入れた金額を損金算入することができますが、資本金の額等が 1 億円を超える法人などは原則損金算入することができません。

(7) 設備投資等に対する特別償却や税額控除の適用(青色申告)

資本金の額等1 億円以下の中小企業者等が機械や設備、ソフトウェアなどに投資した場合、一定の要件を満たせば次のような「特別償却」や「税額控除」といった税制優遇が受けられます。特別償却は、通常より多くの償却費を早期に計上でき、税額控除は、投資額の一定割合を法人税等から直接控除できる制度です。

(※1) その事業年度の法人税額の 20%が限度
(※2) 対象資産が建物およびその附属設備の場合、税額控除は一定の取得価額の最大 2%、特別償却は
一定の取得価額の最大 25%が限度

 

■地方税に関する取扱い

(1) 外形標準課税の分岐点

資本金の額等1 億円超の場合、法人事業税における外形標準課税の対象となります。外形標準課税は、利益が課税標準となる所得割のほか、支払った家賃や人件費、支払利息等が課税標準となる付加価値割、期末の資本金等の額(資本金の額等と資本剰余金等の合計額)が課税標準となる資本割で構成されています。

なお、令和 7 年 4 月 1 日以後開始事業年度からは、資本金の額等を 1 億円以下に減資したとしても、下記の要件に該当した場合は、引き続き外形標準課税の対象と扱われることとなりました。

・前事業年度が外形標準課税の対象法人
・期末時において、資本金の額等が 1 億円以下
・期末時において、払込資本の額「資本金+資本剰余金」の合計額が 10 億円超
(2) 法人住民税均等割の税額区分

法人の都道府県民税は、資本金等の額の規模で、市町村民税は資本金等の額と従業者数で区分されており、基本的に資本金等の額が 1 千万円以下、1 億円以下、10 億円以下、50 億円以下と区分が上がるにつれて税額が増加していきます。均等割は、税務上の所得が赤字であっても発生するため、固定的な税負担として考慮に入れた上で、資本の払込金額を設定することがポイントです。

■消費税に関する取扱い

●設立初年度と 2 期目における申告義務の判定

資本金の額等 1 千万円未満で設立した法人は、原則として設立初年度と 2 期目は消費税の申告義務が免除(免税事業者)されます。一方、資本金の額等 1 千万円以上で設立した場合、初年度から申告義務が発生します。免税事業者は、消費税の納税負担がありませんが、消費税の還付を受けることもできません。そのため、設立後の事業計画やキャッシュフロー全体を踏まえて、資本金の額等を設定することが重要です。なお、インボイス発行事業者の登録をした場合など、他の規定により申告義務が発生する場合があります。

■電子申告義務

資本金の額等 1 億円超となると、法人税や消費税など主要な税目について、電子申告義務の対象となり、「e-Tax による申告の特例に係る届出書」を所轄税務署へ提出する必要があります。対象となる書類には決算書といった財務諸表などの添付書類も含まれ、これらの書類を含め、仮に書面で提出した場合は、申告していないものと扱われ、無申告加算税の対象にもなりますので、注意が必要です。

■各制度の資本金の額等の判定時期

消費税の申告義務の判定や電子申告義務の判定については「期首資本金の額等」で判定します。また、少額減価償却資産(30 万円未満)の即時償却については、「取得時及び事業供用時の資本金の額等」で判定します。その他の上記制度については、「期末時点の資本金の額等」などで適否を判定します。

 

 

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